実在の人物を演じるニコール・キッドマンの「アラビアンロマン」映画

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映画評論家・秋本鉄次のシネマ道『アラビアの女王 愛と宿命の日々』

GAGA配給/1月21日より丸の内TOEIほかで公開
監督/ヴェルナー・ヘルツォーク
出演/ニコール・キッドマンほか

世界映画ベストテンなんてやると、大体10位以内、悪くても20位以内に入るといわれる天下の名作『アラビアのロレンス』(1962年)。20世紀初頭という時代的背景が一部ダブり、女性版“アラビアのロレンス”というふれこみなのが、この映画だ。

もちろん実在の人物で、劇中では本当に“アラビアのロレンス”との対面シーンまである。その名はガードルード・ベル。イギリスの鉄鋼王の令嬢として生まれ、オックスフォード大を卒業した才女だが、やがてアラビアの地に魅了され、その地に根付こうとする、という実録ロマン大作だ。

主演は天下のハリウッド人気女優のニコール・キッドマン。彼女、『グレース・オブ・モナコ 公妃の切り札』(2014年)ではモナコ王妃を演じたし、ヨーロッパの伝説セレブ女性づいてるなぁ。

まあ、女性が奔放に生きるには窮屈な時代の約百年前だ。富裕層の女性は、社交界にデビューしてキレイキレイしとればヨロシイ、という時代に単身アラビアに向かい、砂漠の民と交流を深める行動力は立派と言えるだろう。考古学者、自由な旅人、諜報員的活動と変幻自在、さらには望んでもかなわぬ二度の悲恋、と波瀾万丈だが、最終的印象は、ブルジョワお嬢様のプチ冒険ストーリーの域に留まり、まるでハーレクイン・ロマンスのよう。

そんな甘口なところは女性向きか。いやいや、いまの女性映画ファンはハードなのをお好みの向きもあるし、一概には言えんぞ。

ボクなんか、ヒネくれているから、もっとヒロインに砂漠で地獄を味わせたれや、とも思ったりする。だいたいが、監督のヘルツォークは若いころ“ドイツの鬼才”と称され、『アギーレ・神の怒り』(1972年)とか『フィッツカラルド』(1981年)などの衝撃的作品で、われわれを驚愕させたものだが、“未知の風土への憧れ”という共通項は変わらずとも、異郷の地の凶暴さとか、土俗的な迷路とかは影をすっかり潜めているのは、正直言って“老い”か(現在74歳)。コメントも「魅力的な女性の物語を観てほしい」とすっかり好々爺的だもの。

とはいえ、この映画を否定しきれないのは、ご贔屓パツキン、ニコール・キッドマンのせい。これは彼女の発案だそうだが、砂漠で突然、持ち歩いている布製のバスタブ(珍しい!)で入浴するシーンがある。ここでチラリとヌードも。『虹蛇と眠る女』(2015年)ではもっと過激にヘアヌードまで披露していたし、トップ女優にしてこの覚悟、偉い! 日本の脱ぎ惜しみ人気女優は見習うべし。

これはあくまで、アラビア衣裳でキリリと砂漠の地に立つ姿もお美しいスター女優を観るための“アラビアン・ロマン映画”である。

 

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