息苦しい艦内描写に敵艦との耐久戦がすごい潜水艦映画の白眉!

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映画評論家・秋本鉄次が往年の名作傑作を探る『昔の映画が出ています』

作品目『Uボート』

ドイツ/1982年
監督/ウォルフガング・ペーターゼン
出演/ユルゲン・プロホノフほか

戦争なんて真っ平なくせに、男っていうのはミリタリーものには妙に関心を持ちがちだ。ボクだって、下旬から公開の『キングコング 髑髏島の巨神』で、島に住む太平洋戦争の生き残りパイロットが、墜落した軍用機のサンダーボルト、ゼロ戦、B‐29の残骸を使って脱出用のモーターボートを作るってくだりに興奮したりして。よほどの“ミリタリー女子”でもない限り、理解不能だろうなあ。

戦争映画の中でも潜水艦映画好きは多い。狭い艦内に疑似体験的に身を置き、「ピ~ン ピ~ン」と聞こえる不気味なソナー音、水圧でボルトがピキピキいう艦のキシむ音などを体感する…そんな醍醐味が最も味わえる一本がこの映画だ。

1970年代後半、ドイツ映画(まだベルリンの壁崩壊前で、正確には西ドイツ)は“ニュー・ジャーマン・シネマ”と呼ばれる新勢力が勃興するが、1980年代に入って、その第二世代がちょっと芸術に走り過ぎた感のある前世代に代わって“硬派エンタティンメント”作を撮り始めたころ。この映画のペーターゼン監督は、当時のドイツ映画最大の製作費をかけた戦争映画大作を任せられた。

 

潜水艦内の臨場感とシビアな結末

描かれるのは、潜水艦バトルの臨場感、そして、生きて祖国に帰ってこそ、という切実な願いだ。最年長の艦長でも30歳、部下たちは若い20歳そこそこ。40数名を率いて戦火の中を敢闘し、無事祖国の土を踏めるのか? とハラハラもので観賞することができる。

舞台設定の1941年はそろそろナチスドイツの勢いも鈍ってきたころで、苦戦していた。“ハイル・ヒトラー”の代わりに、敵の兵士の愛唱歌を放吟する彼ら。海峡間わずか11km、敵がウヨウヨいる地中海の入り口ジブラルタル海峡は“処女を射貫くよりまだ硬い”と呼ばれるほどの難所だが、『じゃあ、艦の舳先にクリームでも塗るか』というお下品な艦内ジョークが好きだ。そんなヨタでも飛ばさなきゃ、気が狂いそうになるわけよ。

それでなくとも、薄暗い艦内、敵艦の爆雷攻撃、酸素欠乏、浸水の連続だもの。不精髭の男たちの行方は、決して情緒に流されることなく、シビアな結末を迎える。

この映画は世界的大ヒットを収め、監督のペーターゼンも、艦長役のプロホノフもハリウッドに招かれて活躍した。昨今、金正男暗殺に続き、ミサイル4発発射の“将軍様国家”の軽挙妄動次第では“気分はもう戦争”となりかねない。物騒な世の中だね。戦争は映画の中だけで十分なのに…。

 

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