侍ジャパンWBC敗退にふたつの要因

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2017ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)決勝ラウンドの準決勝で、野球日本代表『侍ジャパン』はアメリカと対戦し、1-2で敗れた。試合終了後、小久保裕紀監督は「力を尽くしてくれた。選手たちはよくやってくれた。感謝したいと思う」と敗戦の弁を述べた。

侍ジャパンの準決勝敗退には、これまでにないふたつの要素が絡んでいた。

現地時間3月21日午後6時。ドジャースタジアムのグラウンドキーパーが「この時期、雨が降るだけでもニュースになるのに」とこぼすなか、試合が始まった。スターティングオーダーを交換する際には、審判団がメイングラウンドキーパーを呼び、雨天による中断と、その際のグラウンド整備に備えるよう、両監督の前で伝えていた。雨天コールドの可能性を示唆するためだ。

「MLBでは、雨天中断の際にホームチームへのアドバンテージが発生するケースも見られます。ホームチームに中断時間がどれくらいになるかを先に伝え、そのままビジターチームに伝わらないこともあります」(米国人ライター)

その雨天コールドの可能性が告げられ、小久保監督はより慎重な采配を執った。一回裏の侍ジャパンの攻撃で、先頭打者の山田哲人が出塁すると、続く打者の菊池涼介は犠打で山田を二塁へ送った。いつ、コールドゲームがコールされるか分からないからだ。これまでの試合ではほぼ、打撃戦にして試合を制してきた侍ジャパンにとって、ロースコアで僅差を争う試合は勝ちパターンではなかった。

 

準決勝から導入されたリプレー検証

さらに、侍ジャパンを揺さぶったのが、判定の“リプレー検証”だ。決勝ラウンドから微妙な判定に対し、VTRによる確認を申告できる。メジャーリーグのチャレンジルールとは違い、“1試合2回まで”といった制限もない。アメリカのリーランド監督はこの試合で3度の検証を求め、2回判定を覆した。ひとつは三回表、スタントンの三ゴロで併殺が成立したと思われた場面。二塁手の菊池涼介の足が二塁ベースから離れるのが早かったという判定結果で、併殺を逃した。ふたつめは五回裏の松田宣浩の内野安打が、セーフの判定からアウトに覆った。

「リーランド監督はリプレー検証で試合を中断させたことに一定の満足を得ていました。要するに、侍ジャパンに傾きかけた流れを取り戻すために、VTRで検証する時間を利用したのです」(関係者)

VTRによって判定を覆された菊池は、四回表にアメリカのイエリチの打球を弾いてしまい、二塁まで進めてしまった。菊池は六回裏に同点本塁打を放って挽回したが、過去6戦とは違う重苦しさが侍ジャパンのベンチに漂っていた。そのためか、これまでムードメーカーとしてチームの盛り上げ役になっていた松田も、八回表に三塁走者の帰還を許すファンブルをみせてしまっている。

先の消極的な小久保采配に加え、侍ジャパンは知らないうちに悪循環に陥っていたようだ。

 

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