北朝鮮送還の「金正男氏遺体」墓も建てず無慈悲に処分か

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マレーシアは、駐北朝鮮外交官とその家族9人を人質に取られたことから、金正男氏の遺体と暗殺事件の容疑者と考えられる駐マレーシアの北朝鮮外交官ヒョン・グァンソン2等書記官と、高麗航空関係者のキム・ウギル氏との人質交換に応じた。こうして、遺体と容疑者2人は、3月31日に平壌に戻ってしまった。

その結果、金正男氏の暗殺事件は、肝心の殺人捜査の最終結論を下すことなく幕を閉じることになる。北朝鮮の恫喝にマレーシア政府が屈した格好だ。

「マレーシア当局は『事件の捜査は継続する』と表明しましたが、正男氏の遺体が北朝鮮に戻ったことだけでなく、最重要容疑者の4人の北朝鮮工作員は、すでに事件当日の2月13日に帰国しており、残念ながら当局の今後の捜査は難しいでしょう」(北朝鮮ウオッチャー)

正男氏の遺体はどうなるだろうか。北朝鮮の言い分は、遺体は北朝鮮の国籍を持つ“キム・チョル”にすぎず、故・金正日総書記の長男である金正男氏ではない。したがって、平壌に戻った遺体は、金日成や金正日などの金ファミリーが眠る墓地に埋葬されることはない。

 

正男氏の墓が存在してしまうことの危険性

「時間の経過と共に、北朝鮮の国民の耳には弟の正恩による兄殺しの事実が耳に入ります。仮にキム・チョルなる人間の墓が築かれたとすれば、それは金正恩にとって危険この上ないものになります。そこが反正恩の“メッカ”となる可能性があるからです。墓など築けば、何のために証拠を完全に隠滅して兄を暗殺したのか、意味のないものになってしまいます」(同・ウオッチャー)

金正恩は叔父である張成沢(チャン・ソンテク)元国防委員会副委員長を処刑し、重砲で跡形もなく消し去った。当然墓などない。同じように、正男氏の遺体は火炎放射器などで骨まで完全に焼き尽くされ捨てられただろう。これが独裁者の犯罪のイロハだからだ。

国際社会はこの事件を通じて、金正恩がいかなる人物かを改めて確認したはずだ。北朝鮮との対話や交渉は無意味で、力で北朝鮮国民を解放すべき時を迎えてしまったのかもしれない。

 

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