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通勤ラッシュの詰め込み電車車両を改善しようと、“満員電車ゼロ”を公約に掲げた小池百合子都知事に、早くも暗雲が漂い始めている。
定員倍増の総2階建て車両を導入することで、混雑を解消しようという施策には、「車両の戸口が1階だけだと乗降に時間がかかって意味がない」といった指摘が以前からあった。また、「ホームも2層にするなどの改造を提案しているが投資額が大きすぎる」とJR東日本の冨田哲郎社長も否定的な意見を寄せている。
「運送事業の収益で肝心なのは“積載効率”です。乗車率200%の満員電車は、鉄道会社にとってはむしろ望むべき状態です。サービス向上のため、利益に逆行する満員電車ゼロの施策に、わざわざ金を掛ける必然性がありません」(交通ジャーナリスト)
あの押し合いへし合いの極めて不快な電車内は、運送する側にとってみればとても利益効率のいい状態なのだ。
そんななか、満員電車ゼロ公約の原案を作り、都知事のアドバイザーでもある交通コンサルタント会社『ライトレール』の阿部等社長(55)が、11月に都内で講演会を開いた。しかし、参加者からは公約の実現性が低いとの指摘が相次いだ。
阿部社長は8年前に、著書『満員電車がなくなる日』で総2階建て車両を提唱したが、今回あらためて、より安上がりに輸送力を増強して混雑と遅延を解消する方策を打ち出した。それは次の5点だ。
- 青信号と同時の出発
- ドアが閉まると同時の出発
- 選択停車ダイヤ
- 列車の加速とブレーキの性能向上
- 信号の機能向上
「肝心の満員電車ゼロを実現するための財源ですが、阿部氏は有料着席を考えているようです。東京圏では1日4000万人の鉄道利用者がいます。この平均客単価を40円上げるだけで、年間6000億円の増収になると試算しています。これは東急電鉄の鉄道収入の4倍の規模です」(同・ジャーナリスト)
だが、有料着席のサービスは、乗客がランク付けされているようで、車内トラブルの新たな火種になりそうだ。また、みんなが座わろうとすれば有料座席の奪い合いにもなりかねない。
阿部社長も「まずは深夜運転、時差出勤などできることからやりましょう」と呼び掛けていて、この2層案の実現性は低いように見える。
小池都知事は東京五輪以外の公約のことをどう考えているのだろうか。
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