暗殺のJFK未亡人をN・ポートマンが好演する映画「ジャッキー」

映画評論家・秋本鉄次のシネマ道『ジャッキー ファーストレディ 最後の使命』

キノフィルムズ配給/3月31日より新宿ピカデリーほかで全国公開
監督/パブロ・ラライン
出演/ナタリー・ポートマン、ピーター・サースガードほか

“ジャッキー”と言っても、ジャッキー・チェンの映画ではないのでお間違いなく、とボケかましてすみません。とはいえ、配給元もそれを案じて、副題に“ファーストレディ 最後の使命”と付けて念を押してきたのかも知れない。

マレーシアの首都クアラルンプールの空港で金正男氏が毒物で暗殺されて1カ月以上たったが、謎は深まるばかり。白昼堂々の大胆な手口で、世界を震撼させた“政治的要人暗殺”といえばまず思い出されるのは、1963年11月22日、テキサス州ダラスで凶弾に倒れたジョン・F・ケネディ(通称:JFK)アメリカ大統領だろう。

これまで『ダラスの熱い日』(1974年)、『JFK』(1991年)など、ケネディ暗殺事件を真正面から捉えた作品は少なくないが、大統領夫人ジャクリーン(愛称:ジャッキー)にスポットを当てた作品は皆無に近かった。JFK暗殺後にギリシャの船舶王オナシスと再婚する顛末をモデルにした『愛はエーゲ海に燃ゆ』(1978年)とかはあったが、これは凡作だったし…。今回、暗殺直後の大統領夫人の言動に肉薄したこの映画は、もう出尽くした感があった“JFK暗殺もの”のジャンルで、この手が残っていたかと思わせるものとなった。

 

女優としての貫禄がついたナタリー・ポートマンに注目

演じるのがナタリー・ポートマンというのも注目すべき点だろう。あの『レオン』(1994年)の美少女もすでに三十路半ば、大統領夫人を演じるには十分の歳なんだなあ、と中年ファンは感無量となる映画でもある。そして、いざ一大事のときとなれば、なまじの男よりも女性の方が度胸一番、自分を鼓舞し、見事に事後を仕切ってみせることをここでも実証している。このあたりの腹の括り具合は“極道の妻”と似ているかも知れない。暗殺時、JFKが血染めとなる惨景の記憶を冷静によみがえらせるシーンに凄みあり。

ナタ・ポは、ルックス的にはジャクリーンに似ていないが、雰囲気で似せている。これも女優としての貫禄が付いた証拠だろう。前出の映画にも描かれたように、しばらくしてギリシャの大富豪の元に走ったりして『節操がない』とか、毀誉褒貶(きよほうへん)もあった本元だが、トランプ大統領夫人、安倍首相夫人など“ファーストレディ”が何かと注目あるいは物議の的となっている昨今だけに、実にタイムリーなJFK夫人秘話となった。

 

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