スナイパーが標的を狙う凄みに注目!傑作映画「ジャッカルの日」

映画評論家・秋本鉄次が往年の名作傑作を探る『昔の映画が出ています』

作品目『ジャッカルの日』

イギリス=フランス/1973年
監督/フレッド・ジンネマン
出演/エドワード・フォックスほか

新作でも“JFK暗殺もの”のバリエーションであるナタリー・ポートマン主演の『ジャッキー ファーストレディ 最後の使命』もあることだし、それに呼応する形で、旧作も“大統領暗殺”テーマの傑作を引っ張り出してこよう。フランス大統領ドゴール暗殺未遂事件に題材を取ったこの映画である。

歴史が証明しているように、ドゴールは暗殺されなかったのだが、裏ではこんな暗躍、暗闘があった…という前提なのが、世界的ベストセラー作家フレデリック・フォーサイスの同名原作。実際“ドゴール暗殺計画”はいくつもあったそうだ。私も当時読んで面白かったことを覚えている。その映画化ならさぞ、と期待すると、だいたい肩透かしを食らうのが常だが、この作品は例外。映画も原作と互角に大興奮させられる。先日改めて観たが、やはり面白かった!

 

「ゴルゴ13」を思わせるジャッカルの存在感

当時フランスの植民地だったアルジェリアの独立(このあたりの闘争は最近再公開された1965年作『アルジェの戦い』に詳しい)を認めたドゴールに対し、軍部を中心とした保守過激派は暗殺を画策するがことごとく失敗し、最後の手段として凄腕のスナイパー、『暗号名:ジャッカル』を雇う。まるで“ゴルゴ13”的な展開だが、このジャッカルが孤高で、ビジネスライクで、非情で、となるほど“ゴルゴ13”といい勝負。演じるエドワード・フォックスが痩身でクールでズバリ適役なのだ。他に『空軍大戦略』(1969年)など出演作も多い英国の二枚目俳優だが、これが一世一代の当たり役だろう。

ジャッカルの用意周到な暗殺計画のプロセスを、ドキュメンタリー・タッチのように綴り、見る側の緊張感を高め、ジャッカルの暗殺者哲学なり、思想なりを浮き彫りにしてゆく演出は、さすが、西部劇の『真昼の決闘』(1952年)、サスペンスの『日曜日には鼠を殺せ』(1964年)などリアリズムの傑作が多いフレッド・ジンネマン監督の真骨頂と言える。

好敵手はフランス警察のルヴェレ警視(ミシェル・ロンスダール)で、直接対決はラストだけだが、見えざる相手との両者のかけひきがハンパない。ついに、解放記念日に大衆の前に姿を見せる標的ドゴール、老人に変装し、杖をバラしてライフルに組み立てアパートの上階から狙いをつけるが、そこに警視が現れて、一瞬にして決着がつくまで一気呵成。問答無用の面白さ。これぞスナイパー映画の白眉たる所以である。

これを観ると“空港で毒殺”なんて実に野暮な方法だなあ、と不謹慎なことを考えたりして。

 

【あわせて読みたい】

※ ナオミ・ワッツの薄幸さが光る映画「雨の日は会えない、晴れた日は君を想う」

※ 労働者階級シネマを作り続けるベテラン監督が問う「個人の尊厳」

※ 映画「彼らが本気で編むときは、」で生田斗真が難役に挑戦

※ スティーブン・キング原作の映画「セル」は期待以上のホラー作品

※ 暗殺のJFK未亡人をN・ポートマンが好演する映画「ジャッキー」