「元祖クールジャパン」再検証
~ファイル21【玩具 月給袋】~
4月末日…新入社員にとっては初給料の支給日。うれしいものですよね。口座振込による支給が当たり前になってから久しいですが、ATMが一般に普及する1980年代半ば頃までは、給料はもちろん手渡しでした。
札束が入った給料袋を手にするのって、口座に振り込まれた金額を記した紙切れを見るよりも、ずっと充実感があったでしょうね。そして、なにより現金の入った給料袋には、水戸黄門の印籠のような絶大な力がありました。「この給料袋が目に入らぬか~!」てなもんです。そう、この日だけはお父さんは家庭で大名のように振る舞えたのです。
私が子供の頃のわが家でも父の給料日には、晩御飯のおかずがいつもより少しだけ豪華になり、何となく家の中が明るくなったような気がしたものです。
『サザエさん』など昭和のアニメには、この“給料袋”にまつわるエピソードがいろいろと描かれていました。そんなわけで、昭和のおままごとには欠かせないアイテムだったのが“給料袋”でした。
今回紹介する『玩具 月給袋』は、駄菓子屋でよく売られていた、袋を束ねて表紙をつけただけの粗末な、いわゆる“引き物”駄玩具です。たくさんの袋の束から好きなものを引いて、中に当たりの紙が入っていたらもう1枚引ける“博打”の要素があるものが多かったですね。
それにしても、この給料袋はよくできています。『家族手当』『通勤手当』などの項目があり、まるで本物をコピーしたかのようです。おまけに『月賦代金支払票』なるシビアなものまで入っていて、『カラーテレビ』、『ルームクーラー』など、いかにも昭和って感じの品物が並んでいます。お札は肖像が本物と異なる以外かなりよく出来ています。
ここまでリアルにできていると、ごっこ遊びを超えて学習教材のような気がしてきます。この駄玩具で遊んでいた子供はさぞかしサラリーマン家庭の生活をシミュレーションできたことでしょう。相当な倹約家になって旦那さんをうまく操縦しているはずです。
(写真・文/おおこしたかのぶ)
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