金型ひとつで3種類!業界伝説の名作「コイのプラモデル」

「元祖クールジャパン」再検証

~ファイル24【ナカムラ およぐひごい】~

5月5日は『端午の節句』。現在は地域のゴールデンウィーク行事や、商店街の飾りなどでしか見かけなくなった鯉のぼりですが、かつては、男の子のいる比較的裕福な個人宅が軒先や庭先にハタ竿をたてて、豪華な鯉のぼり自慢をしていたものです。

いや、その頃は鯉のぼりだけではなく、模型屋さんに行くと、鯉のプラモデルまで売られていたのです。

それが今回紹介するナカムラの『およぐひごい』と『およぐにしきごい』。1970年代前後の夏休みのこどもにとって、定番的なプラモデルは、長い紐状のゴムをねじりあげ、その解放力でスクリューを回転させて水上や水中を進む、船や潜水艦のプラモでした。それらと同じゴムの反発力で、なんと尾びれをパタパタと動かす特殊なクランク機構を仕込んだ非常にユニークなプラモです。

コイが子供にウケるとは思えませんが、何とも渋いチョイス。箱絵もグッとリアルで、このまま日展に出品してもよさそうな名画タッチではありませんか。

ちなみに絵師は鴨下示佳さん。1960~1970年代にかけて、数多くの駄モノ系プラモデルの箱絵をリアルな筆致で手掛けました。もっと評価されてもいい絵師さんです。

このプラモデルのスゴイところは、ひとつの金型で2種のプラモにしてしまったことです。おなじ元型で、緑色の“量産型”と、赤色の“シャア専用機”を作り分けたバンダイのガンプラを、10年以上もまえに先取りしていたわけです。

上が『およぐひごい』で、下が『およぐにしきごい』のボディー

『およぐひごい』(1966年発売)は赤い成形色。『およぐにしきごい』(1967年発売)はマーブル模様の成形色で、というわけです。ちょうどマーブル模様のプラスチック製品が開発された頃だったので、おそらくそれを見た開発担当者がピンときて、“ひごい”を“にしきごい”にして再販しようと考えたのではないでしょうか。

さて、これで終わらないのが駄プラ業界の恐ろしさです。この会社は1975年に大ヒットした『およげ!たいやきくん』ブームに便乗して、なんと『およげ!こいちゃん』というプラモを、またまた同じ金型からでっちあげたのです。たいやきとコイでは全然違うのに。もうメチャクチャです(笑)。

箱絵もこれまでのリアルタッチからガラリとマンガタッチに変わっています。いやはや何とも、このたくましさ、見習いたいもんですなぁ。

(写真・文/おおこしたかのぶ)

 

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