映画評論家・秋本鉄次のシネマ道『さようなら』

そんな彼女が演じるのが、本来なら本国の南アフリカではマイノリティーになりようがない境遇だったにもかかわらず、日本では難民外国人扱いの20代の女性、ターニャ。

やがて放射能に汚染され、国外脱出が始まった近未来の日本で、避難優先順位下位の難民外国人として後回しにされたあげく取り残され、日本の辺境で一人死を待つのみの身の上……という設定がかなりユニークだった。

そういえば、現実にシリアの難民の人々には高等教育を受けた人々が多い、と聞く。元は、劇作家の平田オリザとロボット研究の第一人者石黒浩が共同で進める人間とアンドロイドが舞台上で共演する画期的な演劇プロジェクトで、今回はその映画化。ロング嬢は舞台でも同じ役を演じており、当たり役みたいなものか。

ちなみに、石黒氏のアンドロイドはテレビの『マツコとマツコ』アンドロイド“マツコロイド”も手がけたそうだ。なるほど、見事な造形である。

結婚を約束した婚約者(新井浩文)もさっさと去ってしまうという意表をつく展開となり、残されたのは、死に行く運命の彼女と、死を知らぬアンドロイドのレオナのみ。人間とアンドロイドの本格共演というテクノロジーの勝利のような瞬間なのに、アナログ感のほうが濃厚になる。