R・デ・ニーロの狂気演技が際立つ「熱狂野球ファン」心理映画!

映画評論家・秋本鉄次が往年の名作傑作を探る『昔の映画が出ています』

作品目『ザ・ファン』

アメリカ/1996年
監督/トニー・スコット
出演/ロバート・デ・ニーロほか

プロ野球シーズンもたけなわで、子供のころから野球ファンの僕は、サッカーよりも相撲よりも断然プロ野球である。それもワールド・ベースボール・クラシックとかではなく、ペナントレースの公式戦をだらだらと観るのが好き。長年のスワローズ・ファンだが現在は残念な成績。でも、まだまだこれから、と興味を失わず、日々の試合を楽しんでいる。

そんなファン心理もエスカレートすると怖くなる。ボクも昔はスワローズが、特に巨人に負けるとすごく機嫌が悪くなり、カミさんにたしなめられたりもしたが、最近は随分と枯れて来た。まあ、一喜一憂はするけどね。

 

私生活のストレスをひいきチームに向ける狂気のファン

そこで登場させたいのが、この主人公ギルだ。うだつのあがらないナイフ・セールスマンの彼にとって心躍る日がやってきた。彼が熱狂的ファンである地元サンフランシスコ・ジャイアンツの開幕戦だ。今季は大物スラッガー、レイバーン(ウェズリー・スナイプス)を獲得、戦力は盤石。レイバーンのファンでもある彼は“優勝はもらった”と熱が入る。だが、ギルの私生活は失態続き、不運も重なりドツボ状態。心の拠りどころをレイバーンに向けるが、極度のスランプで、ギルのなかの狂気が次第に目覚め始める。ファンの異常な愛情…ストーカー心理にも通じる主人公をロバート・デ・ニーロが演じるだけに怖いの何の!

最近はすっかり枯淡の境地のデ・ニーロ旦那だが、この当時はまだまだ『タクシー・ドライバー』(1976年)のイメージの狂気を内包させていたものだ。偏執的粘着気質を演じさせたら独壇場! ギルにとって野球場が自分の全存在で、ひいきチームの野球帽にスタジャンと熱狂ファン丸出し。仕事をクビになって(ナイフのセールスマンというのがヤバい)、異常な愛情にますます拍車が掛かる。ひいき選手がスランプなのはライバル選手が原因、だったらソイツを殺してしまえ、という短絡思考がおっかない。明日のギルにならないためにも穏やかなファンでいましょう、と我が身にも教訓を垂れた。

ところで、この映画の監督トニー・スコットは、ほかに『トップ・ガン』(1986年)などの人気監督で直前までバリバリ仕事していたのに、2012年8月、謎の投身自殺を遂げてしまった。やっぱり不吉な映画だ。

 

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