2017年最高の青春映画「夜空はいつも最高密度の青色だ」

映画評論家・秋本鉄次のシネマ道『夜空はいつも最高密度の青色だ』

東京テアトル、リトルモア配給/5月13日より新宿ピカデリーほかで公開
監督/石井裕也
出演/池松壮亮、石橋静河、松田龍平、田中哲司ほか

いい年をして、いまさら“青春映画”でもないと思うのだが、それでも年に1~2本は、鮮烈でいとおしい“若者映画”に出会えるのも、映画を見続けることの恩恵かもしれない。昨年は菅田将暉、小松菜奈の『溺れるナイフ』に惚れ込んだが。今年は、まだ上半期も終わっていないのに、この映画にノックアウトされた。もし、ボクがもっと若くて、10代後半か20代でこの映画を観たら、さらに愛着、共感が増したろうに、と思うと、それだけが口惜しい。

原作は最果タヒの詩集。詩集が元ネタとは珍しく、そこからオリジナルに近い形での映画化だ。新宿と渋谷を舞台にし、日雇い建設作業員の慎二(池松壮亮)と、看護師&ガールズバー嬢の美香(石橋静河)が出会う。報われない若き都市生活者たちが絶望と希望のはざまで生きてゆく…と書くと、ありきたりだが、そんなあらすじでは伝わらない繊細な味わいは、映像を観なくちゃ始まらない。監督は『舟を編む』などの石井裕也で、個人的には今回が一番素晴らしい。まさに“最高密度”の映画である。

 

石橋静河の存在感は見ておくべき

5歳からの東京在住者として、いまでも都会を彷徨うことに飽きないし、この映画における新宿、渋谷の市街の空気、質感は大いに共有できる。ああ、ボクも若いころ、苦渋のどん底サラリーマン時代は、こんな感じでいたなあ、と。慎二と美香による渋谷・宮下公園の階段シーンが印象的だ。見慣れたはずの風景の中で、こんなにもヒリヒリする映画が生まれるなんて!

前出の希望と絶望に加え、饒舌と寡黙とか、生と死とか、ネガティブとポジティブとか、いちいち対照的な描き方で、この若い男女及び取り巻く環境や人物を描き取る石井演出の巧みさに舌を巻いた。

そして、役者の魅力を売り切ることにも長けている。地味な現場作業員の泣き笑いを松田龍平、田中哲司がリアルに演じているのも特質もので、池松壮亮の変幻自在の演技も素敵だが、なんと言っても石橋静河。形から入るボクとしては“静河”って名前に一目惚れ。

『静かなる男』(1952年)と『赤い河』(1948年)を合わせた? 熱心な映画ファン? と勝手に妄想しちゃう。彼女、両親とも著名俳優(石橋凌、原田美枝子)なのを忘れそうなぐらいの逸材だ。母親を少し硬質にした感じの美貌を前面に押し出さず、鬱屈の日々を気概と覚悟と筋肉質のボディーで武装して、市街を歩く男前な彼女がカッコいい。超大物感漂う新人登場! 日本一早くも今年のわが新人女優賞に内定!

 

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