J・チェンが「カンフーなし」で奮闘する鉄道アクション!

映画評論家・秋本鉄次のシネマ道『レイルロード・タイガー』

プレシディオ配給/6月16日よりTOHOシネマズ六本木ヒルズほかで公開
監督/ディン・シェン
出演/ジャッキー・チェン、ファン・ズータオ、池内博之ほか

2016年にアジア人で初めてアカデミー名誉賞を受賞したジャッキー・チェン。正直なところ、本人は主演か助演男優賞のオスカーが欲しかったのだろうが、アクション俳優過小評価の“アカデミー体質“では仕方がないところか。かつてカンフー・スターとして一世を風靡したジャッキーも、すでに還暦越え。さすがに昔ほどカンフー技を見せなくなった。この映画も基本的にカンフーなし!

1941年と言えば、太平洋戦争が始まった年だが、中国大陸ではドロ沼の日中戦争の真っただ中。ジャッキーは地元の男たち(仕立て屋、チンピラ、新米鉄道員など)とツルんで、鉄道内に忍び込み、日本軍の物資を盗んでいるベテラン鉄道員。“レイルロード・タイガース”とも呼ばれ、日本軍にも目のカタキとされていた。もういい歳だが、茶目っ気と冒険心、反骨心がジャッキーのヒゲ面に現れている。『ドランク・モンキー/酔拳』(1978年)のころから約40年“ジャッキー・ウオッチャー”でもあるボクは、この還暦過ぎてもイメージを保持している彼が頼もしい。さすが、アカデミー名誉賞!

 

コミカルなシーンは健在!

そんな彼らが、日本軍の物資輸送を阻止するための鉄橋爆破作戦を失敗した負傷兵の頼みを聞き、再度爆破作戦を敢行するのだが…何せそんな大掛かりな作戦とは無縁だった市井の男たちだけに、作戦はいきあたりばったり、出たとこ勝負なのがジャッキー流? 列車にひそかに乗り込むのに、竹竿やハシゴなど“そのへんの道具”を使うコミカルなシーンもまたジャッキー映画の伝統でもある。

戦争映画において“鉄橋”“列車”はかなり興奮度のポイント高い設定である。『大列車作戦』(1964年)、『脱走特急』(1965年)、『レマゲン鉄橋』(1969年)など、かつては枚挙にいとまがなかったが、最近はすっかり鳴りを潜めていただけに、うれしい企画である。列車は阻止できるのか、逃げ切れるのか、橋は爆破できるのか、死守できるのか、ハラハラ、ドキドキの連続! スケール満点。クライマックスはド迫力の一語で、鉄道アクション・ファンは必見だろう。

中国の鉄道局の協力により、大型の蒸気機関車が貸与され、鉄道労働者の多くも撮影に動員されたが、脱線・衝突・爆破シーンがあるため、実物の4分の1の大きさの列車を作り、高さ4メートルの鉄橋も建設した、というから大掛かり。“レイルロード・タイガース”の宿敵でいつも煮え湯を飲まされる日本の指揮官に池内博之が扮している。その執念深さは劇画チックで、ちょっと“抗日的”な部分も、何だか笑って許せるのは、ジャッキーの人徳に違いない。

 

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