
barman / PIXTA(ピクスタ)
安倍晋三政権は、岩盤規制改革を看板政策に掲げ、文部科学省の権益や権限を取り上げた。内閣府所管の国家戦略特区を活用した大学の学部新増設が、その最たるものである。
この国家戦略特区を活用した学部新設の第1弾となったのが、今春、千葉県成田市に誕生した国際医療福祉大(本部:栃木県大田原市)の医学部新設だ。
成田市と同大は共同で“国際医療学園都市構想”を提案し、特区事業として2015年11月に政府に認められたもので、医学部の新設は1979年の琉球大医学部設置以来、実に38年ぶりだった。
千葉県内の医師不足は深刻で、2014年の厚労省の調査では、県の人口10万人あたりの医師数は182.9人で全国45位。それでも日本医師会は反対している。理由は単純。新しい医者が増えると、既存の医者が“食いっぱぐれる”からだ。
そして、国家戦略特区を活用した学部新設といえば、国会で厳しい追及に遭っている学校法人加計学園(岡山市)の獣医学部新設をめぐる事案だ。安倍首相と30年以上の親交があるとされる、加計孝太郎氏が理事長を務める同学園については、政府が今年1月、愛媛県今治市の国家戦略特区を活用した獣医学部新設の事業者として、岡山理科大を傘下に持つ同学園を選定した。
こちらの新設は何と52年ぶり。「設置せよ」という圧力と同時に、獣医師会からは「開学阻止」の圧力がかかったことは国際医福大と同じ構図だ。
官邸以外から行政はゆがめられたことがなかったのか?
大学や学部の新設については膨大な資料を作成し、長時間におよぶ文科省との折衝が必要となる。医学部なら厚労省、獣医学部なら農水省との折衝も必要だ。その過程で文科省はムチを使ってアメ(天下り)を得る。また、医学部ならば厚労省と医師会から、獣医学部なら農水省と獣医師会からの開学阻止圧力が加わる。同時に医師、獣医師会の意向を忖度した族議員からの圧力も加わる。
前川喜平前文科省事務次官が「官邸から行政がゆがめられた」と言うなら、圧力団体や族議員から行政がゆがめられたことはなかったのか、ここは立証してほしいものだ。
今後、野党の安倍追及は国際医福大に移る。高齢化で医師不足は明らかなのに、なぜ40年近く医学部の新設が認められなかったのか。国民が本当に知りたいのは、森友学園でも加計学園でもなく、医学部の新設が認められなかったことの真相だ。
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