拷問シーンとD・ホフマンの走りが凄い!ナチ残党に狙われた男の奮闘映画

映画評論家・秋本鉄次が往年の名作傑作を探る『昔の映画が出ています』

作品目『マラソンマン』

アメリカ/1976年
監督/ジョン・シュレシンジャー
出演/ダスティン・ホフマンほか

ベルリンの壁崩壊、東西ドイツ統一の立役者として知られたドイツのヘルムート・コール元首相が87歳で死去したと先日報じられた。“ドイツの東西分裂”とともに、悪名高きナチス・ドイツの“負の遺産”として常に挙げられていたのが“ナチ残党”で、第三帝国の再興を期して暗躍し、ネオナチ集団の黒幕とも囁かれていた。そんなナチ残党が登場する映画で、最も面白い1本がこれではないか。

監督はジョン・シュレシンジャー。すでに鬼籍に入られて久しいが、その代表作と言えば、やっぱりアカデミー賞に輝いた『真夜中のカーボーイ』(1969年)がイの一番なのは衆目の一致するところだろう。アメリカン・ニューシネマ作品のなかには、いま見ると鼻白むものもあるが、この映画こそ“不朽の名作”と評していい。で、じゃあその次は、と来れば、この『マラソンマン』! 競馬で言えば1、2着固定のガチガチ馬券みたいなもの。

 

おぞましすぎる拷問シーン

兄が元ナチスの宝石の運び屋をしていたとはつゆ知らず、黙々とマラソンを続けていた青年が、兄の死後、宝石の在りかめぐって追撃される、という、いわば“巻き込まれ型”サスペンスの典型でもある。最大の見せ場はふたつ! と断言しよう。

『真夜中のカーボーイ』でウマがあったのか、再び起用されたダスティン・ホフマン。あのみっともなくも愛すべき“ネズミ男”から一転、今回はアベベを尊敬し、マラソンの練習に余念のない誠実な青年という役柄だ。脚の不自由な設定だったあの“ネズミ男”の無念を晴らすかのように、ここでは日ごろ鍛えた自慢の足で、ナチ残党の追撃の魔手から逃げる、逃げて、逃げて逃げまくる。何だか競馬の小柄な逃げ馬の奮闘に似ていて思わず応援したくなるはず。

しかし、そんな彼もついに捕まり、診療台に拘束され、元歯科医の男によって歯の神経を痛め付けられる。この拷問の凄まじさ。ここがもうひとつの見せ場だろう。名優サー・ローレンス・オリビエが、珍しくスキンヘッドの憎々しいナチス戦犯に扮し、地獄の微笑みを浮かべながら行うこの冷酷非情な拷問は、まさに神経に触る。エグい拷問シーンなんて平ちゃらのボクも、観た当時に鳥肌が立った。もうやめてくれえ、と心の中で叫んだっけ。

診療台から動けないホフマンのおびえた表情、うなる金属ドリルの冷たい質感、サディスティックなオリビエ…。圧巻であった。ちなみにホフマンはこの8月で80歳を迎えるが、まだまだ現役で頼もしい。

 

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