窪塚洋介と降谷健志が女のために奔走する映画「アリーキャット」

映画評論家・秋本鉄次のシネマ道『アリーキャット』

アークエンタテインメント配給/7月15日よりテアトル新宿ほかで公開
監督/榊英雄
出演/窪塚洋介、降谷健志、市川由衣、品川祐、火野正平ほか

かつて『GO』(2001年)、『ピンポン』(2002年)とエッジの効いた若者映画で“時代の寵児”となった窪塚洋介も、38歳と齢を重ねた。そのあいだ、自宅マンションから飛び降り自殺未遂を図り、奇跡的に助かったこともあったし、役者として“あの人はいま…”的な期間もあった。まさに、ライク・ア・ローリング・ストーン。転がる石のように紆余曲折、毀誉褒貶あって現在に至る、という俳優は好きだね。

彼は今年で俳優人生21年目だという。1月公開のマーチン・スコセッシ監督『SILENCE~沈黙~』で重要なキチジロー役を演じ、ハリウッド進出も本格化しようとしているのはご同慶の至りだ。

 

半端者にも五分の魂

そんな窪塚が、小品だけど、実に愛着を感じずにはいられないバディ(相棒)・ムービーを見せてくれたのがこの新作だ。ヤンチャな時期を経験し、口髭も似合うアラフォー男になり、渋みも身に付けてきたいまにピタリの役柄である。うだつの上がらないボクサーくずれのガードマンの窪塚と、しがない自動車整備工を演じる『Dragon Ash』の降谷建志とのコンビが実にイイ。コンビを組むきっかけが、保健所で保護された野良猫の取り合いが縁というのが微笑ましく、意表を突いた。この冒頭のツカミでまず乗れる。

かつて東洋チャンプまで登り詰めたボクサーの過去を見込まれた窪塚が、元夫のストーカー被害に悩むシングルマザー(市川由衣)をボディーガードするハメになるところから歯車が動き出す。単にストーカー元夫を撃退すれば一件落着と思ったら、このシングルマザーには裏の顔もあり、それはふたりが闇社会と対峙することを意味していた。

品川祐がストーカー役で不気味でしぶとい怪演を見せれば、市川由衣も単なる被害者というだけでなく、もっとしたたかな女の顔を見せる。こういう一筋縄ではいかないキャラクターを醸成するのは、榊英雄監督ならでは。遠藤憲一が四肢欠損の取り立てヤクザを演じた『木屋町DARUMA』(2014年)はその年のわがベストワンでもあった。共通するのは、裏社会の隅で這いずり回る半端者にも五分の魂があるぞ、ナメンなよ、という心情だ。傷つき、車の中で「死にたくねえよお」と弱音を吐く窪塚は、往年のバディ・ムービーの名作『真夜中のカーボーイ』(1969年)のダスティン・ホフマンのごとし。そのカッコ悪さは、やがてカッコ良さに転じてゆく。

“アリーキャット(野良猫)”という題名にふさわしく、冒頭と呼応して、猫を使ったラスト・シーンもステキだった。

 

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