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2月11日、映画『すばらしき世界』の初日舞台あいさつが都内で開催。俳優の役所広司、仲野太賀、六角精児、北村有起哉、そして西川美和監督が登壇した。
同作は、直木賞作家・佐木隆三氏の90年のノンフィクション小説『身分帳』の時代設定を現代に置き換え、「社会」と「人間」をテーマにしたヒューマンドラマ。人生の大半を刑務所で過ごした主人公・三上を通して、人間の愛おしさや痛々しさ、社会の光と影があぶりだされた作品となっている。
舞台あいさつで監督は、「17歳で役所さんのドラマを見てから、紆余曲折の中、自分の映画の主演として出ていただいたことが、いまこの瞬間も夢のようで。役所さんがいらっしゃる現場は静かなのに活性化するんです。スタッフ全員が現場で、『映画を作るということはこういうこと』と、感じることができました」と感謝の意を述べた。
加えて、作品については、「前作『永い言い訳』の撮影中に出会って、いままでは自分の人生経験から作っていましたが、犯罪などこういう側面から作ってなかったと…。でも心構えではなく、面白い物語だから映画にしたいと思いました。現状をリサーチするなかで、1度失敗した人が社会でやり直すのは、原作が書かれた時より窮屈になっていると気が付きました。いろいろな時代に響くものになっていると思います」と回顧した。
また、同作で主演を務めた役所は、「佐木さんの原作は、ありのままを書いている力強い小説です。2時間の映画にするのに、作者の男性の目線と監督の女性目線で化学反応が起こり、温かい脚本になりました」と真摯に語った。
役所の演技の凄さは“映し鏡のよう”
役所の演技について聞かれると仲野は、「撮影中、役所さんをみていると、役所さん自身なのか役の三上なのか、境目が分からなくなりました。きっと役と深い対話をし、自身の映し鏡のように演じていたんだと思います。純粋な思いやりがあったように感じました。僕も何度も胸が震える瞬間もありましたし、芝居じゃないところで、こみあげてくるものがありました。自分で制御できないくらい感動して、コントロールできないところで憑依し、津乃田が大きくなっていった。自分と役がシンクロしていることが分かり、いままでない経験でした」と興奮ながらにコメント。
そして六角は、「役所さんはニュートラルに役に入られ、全体を通してみるとこんなにいい芝居をしていたとしみじみ感じられる。僕にはわからない、素晴らしすぎて勉強にならない俳優さんです」と語った。
最後に、自身にとっての「すばらしき世界」について役所は、「戦争とか紛争、二酸化炭素や差別とか偏見が無くなり、世界中の子供たちが夢を見られる世界。オリンピックなどスポーツを通して、世界中の人間が熱狂している姿に『世界って素晴らしい!』と思います」と持論を語り、イベントを締めくくった。
『すばらしき世界』は、主人公・三上が良い面と悪い面の両方を見せることで、より〝人間らしさ〟を感じられる作品となっている。作品を盛り上げる役所の名演に注目したい。