「三丁目の夕日」子役・淳之介だった須賀健太の不良映画「獣道」

映画評論家・秋本鉄次のシネマ道『獣道』

フリーストーン配給/7月15日よりシネマート新宿ほかで上映中、全国順次公開予定
監督/内田英治
出演/伊藤沙莉、須賀健太、アントニー、吉村界人ほか

“昭和ノスタルジー・ブーム”に乗って大ヒットした『ALWAYS 三丁目の夕日』シリーズ(2005~2012年)で、集団就職でやってきた六ちゃん役の堀北真希はその後人気女優となり、電撃結婚・芸能界引退の道を選んだ。さて、もうひとりの“若い主役”でもある淳之介(吉岡英隆扮する売れない作家・茶川と同居する男の子)を演じていた須賀健太クンの“あいつ、今何してる?”は、というと、その後『釣りキチ三平』などの映画を経て、この新作では何と“不良少年”になっていた! これまでの“いい子”のイメージから掛け離れているけど、はてさて。

『獣道』というそのものズバリの題名を裏切ることなく、その手の連中がワンサカ登場し、画面せましと暴れまくるビー・バップ的ヤンチャ映画ではあるが、それだけで終わらないのがお値打ち。テレビドラマの『女王の教室』、『GTO』などで存在感を示した伊藤沙莉が今回は髪をパツキンに染めまくって大イメチェン、“夜露死苦”しているのでよろしく。地方の田舎町のヤンキーたちの“現状はこれです”的に見せてくれる。

 

内田英治監督の描く「祭りの準備」

実はシリアスで笑えない話をあえてポップに描いたのは、孤独死老人ウオッチャーという異形のヒロイン(瀧本公美)を描いた僕の大好きな映画『グレイトフルデッド』とか、どん底の映画人の生態を描いた『下衆の愛』など、ヘンだけどクセになる映画を撮り続ける内田英治監督。今度もヤってくれました。脇役もでんでんとか広田レオナとか一筋縄ではいかない個性派ばかり。内田監督のカオで集めたみたいな配役が面白い。

話のキモは、やっぱり須賀健太が演じるヤンキー世界であがく地方社会の主人公。伊藤沙莉が演じる堕ちてゆくヒロインと対照的に、こちらは何とか“ここではないどこか”を目指す若者だ。この映画で思い出したのは、1975年のATG映画『祭りの準備』、というと年がバレルが、こちらは不良ではなく、カタギの青年だが、主演の江藤潤が、やはり田舎町(高知県・中村市)でもがき、夢破れ、大志を抱いて東京を目指すまでを描いていて、当時まだ20代前半の若者だった僕は大いに感じ入ったものだ。

内田監督がこの映画を観ているか否かは定かでないが、子供のころから“負け犬”や“社会のアウトサイダー”にばかり惹かれてきたという監督による『アナザー“祭りの準備”』だと思うと愛着が一際湧いてくる。これはちょっとヤンキー入っているキミたちのための“祭りの準備”なのだ。

 

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