満島ひかりが女優としての「覚悟」を見せた映画「海辺の生と死」

映画評論家・秋本鉄次のシネマ道『海辺の生と死』

フルモテルモ=スターサンズ配給/7月29日よりテアトル新宿ほかで全国順次公開
監督/越川道夫
出演/満島ひかり、永山絢斗、井之脇海、川瀬陽太、津嘉山正種ほか

満島ひかりといえば、この春、話題をさらったテレビドラマ『カルテット』(TBS系)や、映画『駆込み女と駆出し男』(2015年)などで、日本アカデミー賞助演女優賞を受賞するなど、演技派美人女優としての評価を確固たるものにしている。家電のCMでもおなじみ。そんな彼女の女優としての覚悟が伝わるのがこの新作だ。刮目して観てほしい。

原作は島尾ミホの同名小説に、夫で『死の棘』などの作家・島尾敏雄の『島の果て』などに基づいている。ミホが太平洋戦争末期、奄美群島・加計呂麻島で、後に夫となる島尾との出会いと愛を鮮烈に描いた“戦時下の恋愛映画”で、まあ、原作者は戦後も生きて夫婦となり、小説家として名を成すのだから、映画でふたりが死ぬはずはない、と察せられるが、それでも、明日をも知れぬ、命ぎりぎりの極限下での男と女、その愛の行方は気になる。

 

満島ひかりが覚悟とこだわりを見せた「ヌードシーン」

島の国民学校の代用教員・トエは、島に秘密裏に作られた特攻艇基地の指揮官・朔中尉(永山絢斗)と知り合う。出撃をジリジリと待つ男と、彼と一緒にいたい女の狂おしさを満島は全身全霊で表現していて、息を呑むほど。満島はルーツに奄美大島を持つだけに、期するものがあったのだろう。また、彼女がせつせつと歌う島唄のメロディーも、観る側の心にじんわりと訴えかける。

で、最大のハイライトは、たとえオジサン観客でなくとも、やっぱり“水ごり”ヌード・シーンだろう。広島に新型爆弾が落ちた直後、トエの元に、特攻命令が出たとの報が入る。すると、彼女は意を決したかのように庭に出て、衣服を脱ぎ捨て、薄暗がりのなか、手桶で水瓶から何度も水を汲み、自らの裸身に水を勢いよく被せるのだ。その間、数十秒、カメラは据えっぱなしで、満島の“微乳”を捉える。この場合、巨乳だと、はかなさ、いとおしさが醸し出されにくいので、微乳でヨカッタ、と言いたい。

満島は映画雑誌『キネマ旬報』で、《吹き替えは嫌いです。たとえ足だけでも自分の役を違う人がやるのは…》と明快に答えている。脱ぐときは潔くすべてさらけ出す覚悟のある女優さんなのだ。胸が小さいことも気にしており、《胸がすごく大きい設定のヌードだったらどうしよう》とも語っている。

この“水ごり”のあと、海辺で、自らの体に砂をかけ、狂ったようにのけぞり、悶え、自慰か、疑似性交か、というほどの凄絶シーンも素晴らしい。完全に“女優としての覚悟”を見せた満島ひかり。

共演者の永山絢斗とのゴシップもあり、華も実もある大女優への道を歩むのか。いずれにしても、もはや怖いものナシ!

 

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