あの出家女優が「人肉食い映画に出させられて…」と言った問題作!

映画評論家・秋本鉄次のシネマ道『東京喰種 トーキョーグール』

松竹配給/7月29日より新宿ピカデリーほかで全国公開
監督/萩原健太郎
出演/窪田正孝、清水富美加、蒼井優、鈴木伸之、大泉洋ほか

この春、突然の“出家宣言”で世間を騒がせた女優の清水富美加(現:千眼美子)が“不本意なお仕事”のひとつとして挙げていた「モラル的にどうかと思う、人肉を食べたりする映画に出させられて…」というのが、恐らくこの新作のことだろう。

4月に公開された『暗黒女子』でも人肉料理を喰うシーンがあったので、この2作品の合わせ技で嫌気が差したのかな。“人食い女優”と言われかねないから、とでも…。ほかのことはともかく、出演作はそんなにゲテモノではないし、若手女優のチャレンジで割り切れる範囲内だと、ボクには思えるが。

人の姿をしながら人を食らう、怪人“喰種(グール)”が潜むという東京で、人間対喰種との衝突が激化するなか、ふたつの世界を知る青年が立ち上がる…というSFアクション・ホラー仕立ての衝撃作だ。原作は石田スイの累計2300万部を誇る超人気コミックス。その実写映画化で、NHK朝ドラ『花子とアン』で注目され、最近は『ラストコップTHE MOVIE』がある窪田正孝が、ごく普通のさえない大学生で運命の青年となる“金木研”を演じている。

 

ふたつの価値観のなかでの苦悩と葛藤

冒頭のシーンは原作のまんまなので、原作ファンはすんなりと入っていけるはず。主人公が行きつけの喫茶店で出会う憧れの女性・リゼが実は喰種で、その内臓を移植された金木は“半喰種”になってしまう。人間と喰種、ふたつの世界、ふたつの価値観のなかで苦悩、葛藤する姿が描かれる。このリゼ役の蒼井優が、『家族はつらいよ』シリーズなどの貞淑な役とは打って変わって、ゾンビかバンパイアかみたいに変身し、血のしたたる口裂け女になる特撮が見もの。

喰種を単に“おぞましい敵”とせず、人間と同様に守るべき家族や大切な友人がいて、愛や哀しみ、憎しみを持つ生き物として描かれ、他の平凡なゾンビ映画などと一線を画しているのがお値打ち。

主人公が半喰種になることにより、彼らの痛みも分かるようになる設定も面白い。これらは萩原健太郎監督のこだわった部分だという。要するに“害獣”として人間が敵対してきた狼の存在と似ている。

さて、冒頭の清水富美加(としての最後の作品か)も喰種の女子高校生役で、一見とっつきにくいが、実は優しい一面もあり、後半は主人公を助ける存在となっていくので、決して“悪い役”ではないよ。彼女は何が不満だったのか、ボクにはよく分からない。

“悪役”というなら、喰種を駆逐する捜査官を演じる大泉洋だろう。冷酷非情、手段を選ばず、執念の鬼のような不気味な男で、これまでの軽妙洒脱なイメージを見事に覆し、一見に値する。

 

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