食人映画にあらず!セカチュー意識の青春映画「君の膵臓を食べたい」

映画評論家・秋本鉄次のシネマ道『君の膵臓を食べたい』

東宝配給/TOHOシネマズ新宿ほかで全国公開中
監督/月川翔
出演/浜辺美波、北村匠海、北川景子、小栗旬、上地雄輔ほか

略称“キミスイ”だそうだ。『何だ、そりゃ。“肝吸い”なら知ってるけど…』とオヤジギャグで返すと笑われそう。カニバリズム(人肉食い)に目覚めた主人公が、愛する人の臓物を…みたいな内容か、と連想してしまうほど、ショッキングな題名ではある。先週同時期封切り作に『東京喰種 トーキョーグール』があったから、“食人映画対決”かと早合点する人もいるかも知れない。しかし、原作を読んだ人なら承知だろうが、これはそんじょそこらの“キラキラ青春映画”とは違う、実にビターな味わいの逸品となった。

高校時代に膵臓の病を抱える女子高生・桜良(浜辺美波)と出会ったネクラな主人公の『僕』(北村匠海)の過去と現在を交錯させて描く。あと1、2年の命という秘密を『僕』にだけ打ち明け、明るく振る舞う彼女…またぞろ“難病もの”の悪しきパターンかと思わせて、後半、フェイントに近いような、でもあり得ると思わせる、意外な形で終止符が打たれるあたり、アンチ“難病もの”の気概を感じてしまい、あっぱれ、と言いたい。

 

安っぽい恋愛映画とは違う

伏線の張り方もさりげなく巧い。現在のパートでは、『僕』を小栗旬、ヒロインの親友を北川景子が演じている。目立たない小栗旬も、たまには新鮮だ。北川景子の美しさには毎度見惚れるね。彼女の鼻、ノーズ美が素晴らしい。

この“大人になって12年後”は、原作にないパート。ここにも映画のオリジナリティーを感じる。この映画、なかなか“やる”のだ。

ところで、この映画の構図は、13年前に大ヒットした森山未來と長澤まさみ主演の『世界の中心で、愛をさけぶ』(2004年)に実はよく似ている。若いふたりの過去と現在を描き、大人になった主人公を大沢たかお、その恋人を柴咲コウが演じていた。あのときも略称“セカチュー”と呼ばれ、流行語にもなったほど。実は、北村の事務所は“セカチュー”に出資した過去がある。浜辺は長澤の事務所の後輩であり、同じく“東宝シンデレラ”出身という関連性があるだけに、いや応なく“セカチュー”の夢よもう一度! と意識されるわけだ。

若い人受けはもちろん、大人の鑑賞にも堪えられる。スレたボクは、泣きこそしなかったけど、巧みな脚本のせいで予想以上に楽しめた。

一番の良さは、惚れたはれたの安っぽい悲恋ものに堕せず、主役ふたりの関係が、恋人でも親友でもなく、同じ秘密を共有する“同志”のように描かれること。“キラキラ青春映画”に食傷気味のアナタ、この“キミスイ”は、ひと味もふた味も違いますゾ。すでに、作品評価は“セカチュー”を超えている、と個人的には言いたい。

 

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