戦後の沖縄で米軍の圧政と闘った男のドキュメンタリー映画

映画評論家・秋本鉄次のシネマ道『米軍が最も恐れた男 その名は、カメジロー』

彩プロ配給/8月26日より渋谷ユーロスペースにて公開(12日より沖縄先行公開)
監督/佐古忠彦
出演/瀬長亀次郎ほか
語り/山根基世、大杉漣

たまには硬派のドキュメンタリー映画はいかがだろうか。個人的にはテレビ、映画を問わずドキュメンタリーものはよく見る。劇映画にはない妙味があり、特に、著名な偉人伝ではなく“知る人ぞ知る”人物に焦点を当てた作品に興味は尽きない。これは戦後の米軍統治下の沖縄で、その圧政と闘い続けた『瀬長亀次郎』という那覇市長、国会議員を歴任した男の軌跡を、ストレート勝負で追ったもの。

折しも、6月に亡くなった(享年92歳)元沖縄県知事の大田昌秀氏の県民葬が7月26日に宜野湾市で行われ、安倍晋三首相も参列した。現在、『辺野古沖の米軍基地新設』で国と激しく対立している現沖縄県知事の翁長雄志氏は、式辞で『厳しい姿勢で日米両政府や日本国民に、基地問題の解決を求めた』と評価している。その精神の根本はこの瀬長亀次郎にある、と言える。

この映画は、もともとは昨年8月21日に1時間枠の報道番組として高い評価を受けたもの。それを新たに追加取材、再編集を行って映画化した。戦後の“沖縄”を語る上でこの“瀬長亀次郎”は欠かせないというわけだ。

 

「抗い続ける個」カメジローの生涯

監督は、TBSテレビ報道局キャスターの佐古忠彦。これが初メガホン。テーマ音楽は世界的知名度の坂本龍一、語りは名脇役の大杉漣、と一流どころがそろって、“観るべき作品”であることを一層プッシュする。

それにしても、“カメジロー”という呼び方に何だかユーモラスな響きを感じで親しみが湧く。しかし、この痩身、面長、髭もたくわえた男は一筋縄ではいかない。『ひと握りの砂も、一坪の土地もアメリカのものではない!』との熱弁は、沖縄人を奮い立たせる。演説会を開けば数万人も集める彼の影響力を恐れた米軍はさまざまな策略を巡らし、彼の運動を妨害する。このプロセスは大いに見もの。

しかし、彼は屈しない。変節しない。そこがすごい。そこがえらい。統治者が最も恐れるのは“抗い続ける個”であることを、カメジローは自ら証明し、2001年に94歳で死すとも、その遺志は、いまも沖縄に生きている…彼の愛した沖縄の木“ガジュマル”のように逞しく根を張り、揺るがない、嵐にも倒れない…と映画は訴えかける。

同じく、大杉漣氏が語り(朗読)を担当したドキュメンタリー映画『ニッポンの嘘 報道写真家 福島菊次郎90歳』(2012年)と通底する“真の反骨”がここにある。戦後日本で一度もブレずに反骨を貫き、90年以上も生き抜いたキクジローとカメジローに共通項は多い。いやはやキクジローもすごいが、カメジローもえらい! と改めて頭を垂れたい。

 

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