バス旅二代目の田中要次が主演する奇怪SFコメディー映画「蠱毒」

映画評論家・秋本鉄次のシネマ道『蠱毒』

アークエンタテインメント配給/8月19日より新宿武蔵野館ほか全国順次公開
監督/西村喜廣
出演/田中要次、百合沙、鳥居みゆき、川瀬陽太、斎藤工ほか

日本映画、テレビ界のなかでもユニークなキャラの個性派俳優のひとり、田中要次。ブレークしたのは、2001年のテレビドラマ『HERO』で、キムタク行きつけの洋風飲み屋のバーテンダー役。キムタクの無理難題な注文にも『あるよ!』のひと言で、何でも応えてしまう風変わりな中年男役が実によかった。この人、もともとは照明技師で、映画に出入りしているうちにその特異な風貌が買われたのか、俳優としても活躍し始め現在に至る、という変わりダネだ。

そんな名脇役の彼が、何と珍しく主役を張るのがこの新作。取り立て屋の野田(田中)は、気の優しい性格が災いして仕事にならず。鬼社長に役立たずの烙印を押され、母親には金をせびられ、体調が悪くて医者に行ったら衝撃のがん宣告というドツボな人生。唯一の喜びは、落語のテープを聴くことと、行きつけの古本屋で働くカヲル(百合沙)に会うこと。そんななか、空から巨大な透明のフラスコが降りてきて、野田たちの街をスッポリ覆い、人々は謎の寄生生物に操られる戦闘マシーン“ネクロボーグ”と化し、殺し合いを始める。野田もマシーンと化すが、カヲルを守る、という思いは一層強固なものとなり、元ダメ中年らしからぬ獅子奮迅の活躍を始める…という奇想天外なお話だ。

 

田中要次のキャラあってこその映画

“バイオレンス・スプラッター・アクション”という触れ込みだが、そのチープ感がまた魅力! なのだからB級SFコメディーのノリに近いだろう。ド派手メークの“ネクロボーグ”となった田中が大量の血を浴びながら奮戦する姿はけなげで、いとおしく“オジサン萌え”する女子もいるかも知れない。いや、ぜひいてほしいもの。

CGも少し使っているが、基本は低予算ゆえに、アナログなコマ撮りなど“手作り”特撮を駆使している。最新作がこの夏公開中のハリウッド大作『トランスフォーマー』シリーズの製作費百億円超の百分の一以下の製作費と思われるこの和製“トランスフォーマー”もどきに、愛着が湧くかもしれない。血も過剰なぐらいドバドバ出るが、いかにも作り物っぽいので残酷度はあまり感じない。

ヒロインの百合沙も大胆なシーンを見せつけ、女性お笑い芸人の鳥居みゆき、人気男優の斎藤工もヘンな役で登場。遊んでおります。

題名の『蠱毒』は“コドク”と読む。古い呪術の名称だが、同じ読みの“孤独”にも聞こえ、ロンリーハートな哀愁中年取り立て屋の心情ともリンクする。やはり、これは田中要次のキャラがあってこその映画。題名が難しくて読めなくとも、観れば分かる!

 

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