「万引き事情聴取」石原真理子の16歳・映画デビュー作を複雑な思いで観る

作品目『翔んだカップル』

キティ・フィルム/1980年
監督/相米慎二
出演/薬師丸ひろ子、鶴見辰吾、石原真理子、尾美としのりほか

最近の芸能人ゴシップで、小ネタであっても、ちょっと衝撃的だったのが、石原真理子が東京都墨田区内のスーパーでお弁当とお茶を万引きして事情聴取された、という事件だろう。ボクが最初に読んだ報道では《50代で、かつてのプッツン女優》と書かれ、匿名だったので、「これって石原真理子? それとも、もう一人“プッツン女優”と呼ばれた藤谷美和子というセンもあるか」とゲスの勘繰りを入れたものだが、やはり石原であった。すでに彼女は容疑を認め、書類送検されている。

若い人はピンとこないかも知れないが、1980年代、彼女はアイドル女優としてモテモテだった。いまでいえば広瀬すずあたりか。でも、もう少し大人っぽい雰囲気だったかな。テレビでも『ふぞろいの林檎たち』シリーズ(1983年~)での中井貴一の恋人役も好評だったのに、撮影現場をすっぽかしたり、バラエティー番組での不可解な言動などで騒然とさせたのが1980年代。すっかり“プッツン女優”“取り扱い注意人物”となって仕事激減。1990年代には“石原真理絵”名義でヘアヌード写真集を出したり、近年は暴露本出版とかでも騒がせたが、揚げ句の果て“万引き”とは…。おまけに“弁当とお茶”だもの、哀愁漂い過ぎではないか。

 

ベテラン俳優たちが若いころに「呼吸」で作り出した青春映画

前置きが長くなったが、そんな石原真理子、16歳でのデビュー映画がコレ。ヒロインは人気絶頂の薬師丸ひろ子、相手役は鶴見辰吾。不動産屋のダブル・ブッキングで同居するハメになった高校生男女が、学校にバレないように綱渡り生活を送るという学園青春映画で、見た目は今で言う“キラキラ映画”と似ているかも知れない。

だが、のちに“鬼才”として名を馳せながら50代で死した相米慎二監督(これがデビュー作!)お得意のワン・シーン、ワン・カットに近い長回しの中に、青春の泣き笑いが息づく。石原は鶴見に接近する才女役で、尾美としのりが薬師丸に好意を寄せる優等生役だ。

遠足に行った川で鶴見が溺れて大騒ぎになるシーン、薬師丸が鶴見にビンタするシーン、4人がモグラたたきゲームに興じつつ泣きじゃくるシーンなどなど。長回しのカメラの中に、まだまだこれからの俳優たちの“若気”な部分が浮き彫りにされる。青春映画の善し悪しは若い役者たちの“呼吸”なんだな、と思い知らされた。

37年も前の映画だから当たり前だが、みんな若いの何の! 現在、薬師丸はすっかりお母さん役も板に付き、鶴見は渋い中年役、尾美もちょっとクセのある脇役として活躍している。なのに、石原だけがなぜ、この“転落”ぶり、と思うと、複雑な思いですなあ。

(映画評論家・秋本鉄次)

 

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