「ロマンポルノの職人」西村昭五郎監督を悼む代表作

作品目『団地妻 昼下りの情事』

日活/1971年
監督/西村昭五郎
出演/白川和子、浜口竜哉、南条マキほか

近年再評価され、女性ファンも多いという“ロマンポルノ”。その第1作を撮り、その後も『団地妻シリーズ』、『団鬼六シリーズ』など、精力的に撮りまくり“職人”と謳われた西村昭五郎監督が、8月1日、肺炎のため死去、享年87歳、と報道された。ボクも若いころ、ロマンポルノを観まくったクチなので、その訃報に頭を垂れた。

その問題の第1作『団地妻 昼下りの情事』は、当時苦肉の策として、一般映画から成人映画へと路線を切り替えた日活の命運を決めると言っても過言ではなかった。西村監督はデビュー作の『競輪上人行状記』(1963年)が“ギャンブル映画の傑作”だった。主人公の小沢昭一が予想屋生臭坊主に扮し、「お前たちには煩悩がある。煩悩があるうちは車券は取れないっ!」と宣うシーンが最高で、作品の評価も高かった。それなのに、その後はなぜか干され気味で、西村監督が鬱屈していたところに、このロマンポルノ第1作の話が持ち上がり、“ハダカ映画でも何でも飛びついた”そうだ。

西村監督は京大出の秀才だが「たまたまヤマ張った問題が出て受かっただけ、その証拠に勉強なんか全然しなかった」とインタビューでは謙遜して答えていた。専攻の仏文科も「女の子がいっぱいでナンパ目的」と不純な動機を語っている。そのころはまだ存在していた“遊郭”にも通いっぱなしだったから「オンナのハダカに全く抵抗がなかった」とロマンポルノへの“適性”も告白している。

 

苦肉の策の連続が「ロマンポルノ」の基礎を築いた

作品の発想としては、当時のワイドショーで、磨りガラスに人妻が不倫を告白するという企画があって、そのころ流行のニュータウンを舞台に、夫との性生活に満たされない団地妻が売春組織に組み込まれてしまう、という話を骨格にして作られたそうだ。予算がないから、別のテレビ作品で使った団地のセットで撮影したというから切ない。題名は図々しくも、オードリー・ヘップバーンの名作『昼下りの情事』(1957年)からイタダキ、それまで独立系ピンク映画で活躍していた白川和子(当時24歳)を抜擢すると、これが大当たり。

特に電動コケシ(いまならバイブか)に魅せられるあたりの白川のワイセツ感、むっちりとした裸身、口元のスケベぼくろがたまらなかった。封切り当時見ていたボクも大いに興奮させられたものだ。

以後、ロマンポルノ路線は大当たりで、日活は過去の数十億円の借金をあらかた返し、この路線は約17年も続き、白川和子は“ロマンポルノの女王”として謳われた。温故知新。西村監督への追悼の意味も込めてこの“ロマンポルノ第1作”を見てはいかがか。

(映画評論家・秋本鉄次)

 

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