永瀬正敏が27年ぶりジム・ジャームッシュ映画に出演!

映画評論家・秋本鉄次のシネマ道『パターソン』

ロングライド配給/8月26日よりヒューマントラストシネマ有楽町ほかにて公開

監督/ジム・ジャームッシュ

出演/アダム・ドライバー、永瀬正敏ほか

近年も『あん』(15年)、『64-ロクヨン-』(16年)、『光』(17年)など多くの話題作に出演している一線級俳優、永瀬正敏の27年ぶりのジム・ジャームッシュ監督作への出演となった作品である。ジャームッシュといえば80年代の『ストレンジャー・ザン・パラダイス』(84年)や『ダウン・バイ・ロー』(86年)などのオフビート感あふれるユニークな作風で、映画ファンを熱狂させた個性派作家。その後もずっと3~4年に1本、映画を作り続けているのがすごい。

ジャームッシュと永瀬の出会いは、89年の『ミステリー・トレイン』で、プレスリーの故郷メンフィスを舞台にした話。ここで永瀬は工藤夕貴とともに横浜からやってきたロカビリー好きの若者を演じていた。以来2人の友情は続いていたが、頻繁に会っていたわけではない。永瀬は、監督から「米国に拠点を移すな。日本人にはいい役が来ない。日本で素晴らしい仕事をした方が賢明だ」という的確なアドバイスをもらったという。実際、永瀬は日本映画の名作にその後何本も出演し、今回の監督との映画での“再会”となった。

 

アンチ・ドラマが真骨頂

主演はアダム・ドライバー。『スター・ウォーズ フォースの覚醒』(15年)などで世界的スターになった彼が、こんな“小規模映画”に出るのも「ジャームッシュの映画だから。それがすべて」と語っている。ニュージャージー州パターソンでバスの運転手をする地元生まれの男パターソン(町の名前と同じだが、宮崎市に住む宮崎さんみたいなものか)の日常を7日間描いている。美人妻にキス、朝食、歩いて車庫まで、バスを走らせ、空き時間に詩作、帰宅後は妻と食事、愛犬と散歩、時にはバーに立ち寄り一杯だけ飲む…そんなドラマ性を排した“何も起こらない”時間を描いて何が面白いのか、と思うだろうが、これこそがジャームッシュ・タッチ。飽きないから不思議だ。非日常性と言えば、奥さんが美人過ぎるくらいか(テヘラン出身のゴルシフテ・ファラハニ、『パイレーツ・オブ・カリビアン』の最新作にも出ている)。詩作の才能を売り込んで、と奥さんに勧められるが、あまり欲のないパターソン君が微笑ましい。

そして、クライマックス、いよいよ登場するのが、永瀬演じる日本から来た詩人で、偶然出会ったパターソン君と公園のベンチで会話を交わす。永瀬の長い英語シーンなどにも注目だが、こことてその後ドラマチックなことにつながるのか不明のままなのがジャームッシュ映画の真骨頂。これでいいのだ。説明過多、ドラマ性過多の映画やテレビにウンザリしてきた人にこの映画をお奨めしたい。

 

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