役所広司と福山雅治の火花散る裁判映画「三度目の殺人」

映画評論家・秋本鉄次のシネマ道『三度目の殺人』

東宝、ギャガ配給/9月9日よりTOHOシネマズ新宿ほかで全国公開
監督/是枝裕和
出演/福山雅治、役所広司、広瀬すず、斉藤由貴ほか

是枝裕和監督と言えば、これまで“家族”をテーマにヒューマンかつシビアな群像劇の名作を放ってきた才人だが、今回初のサスペンス・ドラマ、それも事件、裁判、法廷ものに挑んだあたりが興味深い。キャストも豪華の一語。『そして父になる』で是枝監督と組んだ福山雅治、同監督の『海街diary』に出演した広瀬すずと、ゆかりのある出演者に加えて、日本映画の“顔”とも言える大物男優の役所広司が是枝組に初参加を果たしたのだから、映画ファンならずとも身を乗り出すに違いない。

それはありふれた裁判で終わるはずだった…。解雇された工場の社長殺しの容疑で逮捕され、自供もした三隅(役所広司)。“裁判は勝つためにあり、真実は二の次”というドライな担当弁護士の重盛(福山雅治)は、被告を死刑から何とか無期懲役あたりに持ち込めば上出来と思っていた。だが、次第に重盛のなかに、ある違和感が生まれ、さらに被害者の娘の咲江(広瀬すず)と三隅との意外な接点が裁判を揺さぶり始める。得体の知れない容疑者と対峙して、その弁護士は初めて「“真実”を知りたい」と思うようになるが…という先が読めない展開、あるいは「スケジュール優先」「蒸し返すのを嫌う」…そんな他の役人や警察と同じく、法曹界もまた抱える悪しき体質にもメスを入れている。

 

7度に及ぶ福山と役所の接見室バトル

ところで、福山雅治と役所広司は、ともに長崎県出身。演技的には“同郷の大先輩”役所の胸を福山が借りる、という構図だろうが、長崎オトコ同士の静かなるバトルとなる接見室のシーンは、計7回にも及ぶ。この接見室の連続が最大の見せ場で、ガラス越しの狭い室内シーンばかりじゃ映画的にどうか、というのは杞憂に終わる。次第次第に役所と福山の横顔がガラス越しに重なってゆき、弁護士と容疑者の境界線が消滅してゆく錯覚を覚え、見事なクライマックスとなっている。サスペンスゆえ、ネタバレ厳禁だが、劇中何度か出てくる“十字”サインにご注目を、とだけ言っておこう。

担当弁護士が容疑者に翻弄されてゆく話は、法廷劇では一日の長があるアメリカ映画ではビリー・ワイルダー監督の名作として名高い『情婦』(1957年)、近年ではこれもド肝を抜かれたリチャード・ギア主演の『真実の行方』(1996年)などがあるが、この邦画も堂々たるもの、と声を大にしたいところ。福山ファンもぜひ見てほしい。そうそう、斉藤由貴も出ている。最近不倫ゴシップで苦しい記者会見をしていたが、今回“被害者の疑惑の妻”役だけに、こちらも注目か。

 

【あわせて読みたい】

★2017/9/9公開
静寂感の強い侵略を受ける異質映画「散歩する侵略者」

★2017/9/9公開
役所広司と福山雅治の火花散る裁判映画「三度目の殺人」 

★2017/9/9公開
謎の休業をしていたすみれのハリウッド・デビュー作「アメイジング・ジャーニー」 

※ バス旅二代目の田中要次が主演する奇怪SFコメディー映画「蠱毒」

※ 戦後の沖縄で米軍の圧政と闘った男のドキュメンタリー映画