
画/彩賀ゆう (C)まいじつ
アメリカのドナルド・トランプ大統領は、大統領選挙中に「メキシコとの国境に壁を作る」と発言し、メキシコはもちろん在米メキシコ人や世界中の人たちから強く非難された。
国境の壁とは、メキシコからアメリカへの密輸や密入国を防ぐことを目的に、両国国境に沿った一連の壁とフェンスのことだ。
「両国の国境総全長は1989マイル(約3201キロメートル)あります。実際には物理的な壁だけではなく、アメリカ国境警備隊によってモニタリングされているセンサーと監視カメラのシステムによる『仮想フェンス』の強化も国境の壁といえます」(在米日本人ジャーナリスト)
トランプ大統領の発言の背景には、メキシコの麻薬組織が、長年アメリカで暗躍していることに対する苛立ちがある。麻薬問題についてはメキシコ政府もアメリカ同様に頭を抱えており、麻薬組織を束ねるマフィアは過去に組織への取り締まりを強化しようとした政治家を何人も消している。
麻薬組織が生業にしている麻薬ルートに文字通りの “壁”が造られると、麻薬組織にとって最大の資金源であるアメリカを失い、自らの生命線を遮断されることになるのだ。
メキシコマフィアの秘密トンネルで中国人を拘束?
ところが、アメリカ西海岸第2の都市であるカリフォルニア州サンディエゴでは、8月29日に麻薬カルテルが掘った秘密トンネルから入国した中国からの不法移民がアメリカ税関・国境警備局によって拘束された。もともとメキシコからカリフォルニア州やアリゾナ州へ繋がるトンネルは、麻薬カルテルが掘ったものなのだが、トランプ政権となって国境の壁を造ると言い出した直後からトンネルの発見率が増え、逮捕者も増えた。ちなみに今年上半期の不法入国の逮捕者は193名だったという。
「トンネル出口で国境警備隊員が待機していると、不法移民が30名現れ、このうち23名が中国人男女でした。彼らは中国からメキシコ経由でアメリカへの密入国を企てたのですが、マフィアに2万ドル支払ったと供述しています。中国は経済成長が著しく、賃金がこの10年で4倍になったとされるのに、なぜいまだに外国へ命懸けで渡航し、しかも麻薬マフィアに2万ドルも支払ってまで出稼ぎに行く必要があるのでしょうか。理解不能です」(在日中国人ジャーナリスト)
中国はよほど住みづらいようだ。
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