山田涼介が泣かせる映画「ナミヤ雑貨店の奇蹟」

映画評論家・秋本鉄次のシネマ道『ナミヤ雑貨店の奇蹟』

配給/KADOKAWA、松竹 9月23日より新宿ピカデリーほかにて全国公開
監督/廣木隆一
出演/山田涼介、西田敏行、尾野真千子、村上虹郎、門脇麦ほか

『Hey! Say! JUMP』の人気者、山田涼介の『映画 暗殺教室』(2015年)などに続く主演作で、同等の主演として日本映画の重鎮・西田敏行のほか、演技陣に主役級の顔をそろえた豪華版である。原作はベストセラー作家・東野圭吾の同名原作。『東野作品中最も泣ける』ともっぱらだ。監督は今年の夏に公開された『彼女の人生は間違いじゃない』がとてもよかった廣木隆一だけに、大いに期待が持てるというものだ。

1980年、地方都市で“ナミヤ雑貨店”の店主をしていた浪矢(西田)は商売の傍ら、お客さんの“悩み相談”を手紙で回答して好評を得ていた。だが、その後、浪矢は亡くなり、店もすっかり空き家になっていた2012年、この家に敦也(山田)たちが一夜を明かすため忍び込む。やがて彼らはこの店が、時空を越えて“悩み相談”の手紙がシャッターの郵便受けに舞い込む不思議な空間だと気付く。32年の時空を往還してつづられる綿密に絡み合った5つの美しいエピソードの群像劇でもある。

もっと平たく言えば“タイムトラベルもの”だが、『バック・トゥ・ザ・フューチャー』シリーズ(1985年~)じゃないので、タイムマシーンみたいなものが登場するわけではない。あくまで“空き家となった雑貨店”がその舞台になるというのは実に珍しい。この雑貨店の外装は、ノスタルジックな街並で知られる大分県豊後高田市に再現したもので“プチ・三丁目の夕日”が楽しめ、“奇蹟作り”の大いなる後押しとなった。

 

「ラストの山田君の顔に泣かされた」

舞台挨拶で主演の山田涼介が、共演の西田敏行に「ジェームズ・ディーンみたいだったよ」と言われると「林遣都君にもそう言っていましたよ」とツッコミ。「いや、ジェームズ・ディーンも作品によって違うから」と、とっさに返す西田の“アドリブの力”もさすが。でも、「ラストの山田君の顔に泣かされた」とは本当のこと。

ジェームズ・ディーンとは『エデンの東』(1955年)、『理由なき反抗』(1955年)など、わずか3本の主演作を残して24歳で交通事故死した伝説のハリウッド・スターだ。それの再来とするのはさすがにオーバーだとは思うが、山田は辛い生い立ちから心に傷を負った青年を透明感たっぷりに演じていることは確かで、対照的に慈愛に満ちた笑顔の“回答者”として観る者を魅了する西田と好対になっている。

“ナミヤ”って、やっぱり“ナヤミ”のもじりなのだろうか。

道を間違った若者と、道を教えて来た老店主。山田と西田の同画面での共演はないのだが、しっかりと心の中で交錯させる廣木演出は堂々たるもの。“悩み相談”は人を救うのか、逆に人生を誤らせるのか、というシビアな疑問も孕ませている。映画の秋、感動の秋にピッタリ、とはこういう映画のことを言うんだろう。

 

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