吉高由里子が「殺人衝動を押さえられない女性」を熱演する衝撃作

映画評論家・秋本鉄次のシネマ道『ユリゴコロ』

配給/東映 新宿バルト9ほかにて全国公開中
監督/熊澤尚人
出演/吉高由里子、松坂桃李、松山ケンイチ、清野菜名ほか

吉高由里子といえば初主演作『蛇にピアス』(08年)では大胆なヌードを披露し、その後は『婚前特急』(11年)などの映画でも、NHK朝ドラ『花子とアン』(14年)や民放連ドラ『東京タラレバ娘』(17年)などのテレビでも明るく前向きなヒロインを演じることが多かったが、ここでは一気にイメチェン、殺人衝動が抑えられず、人を殺すことで心の拠りどころを求める歪んだヒロインを演じているのが見もの。沼田まほかるの同名小説を、『君に届け』(10年)など青春ものが目立った熊澤監督が、こちらもイメチェン、原作をかなりアレンジし、“美しき殺人鬼”の映画を練り上げた。

個人的には吉高由里子は、あの衝撃的な『蛇にピアス』がまずありきだし、私生活の奔放で大胆な発言も含め、こういう吉高こそ観たかった! というのが正直なところ。おそらく、本人のもともとの体質は“暗い”んじゃないか、低体温、低血圧じゃないか、と邪推してしまうほど。それだけ熱演ということ。クライマックスの撮影では『2日間、泣きっぱなし』、疲労困憊の中で挑んだとか。

なるほど、さもありなん。絶望を抱えるその横顔を“セクシー”と思ってしまうボクも異常なのかね。

 

美しき殺人鬼の行き着くところは…

実家の押し入れから“ユリゴコロ”と書かれた美紗子という女性の手記を発見した亮介(松坂桃李)は、『私のように平気で人を殺す人間は、脳の仕組みがどこか普通と違うのでしょうか?』という衝撃の一文で始まる内容にショックを受ける。ン十年前、幼いころに幼女を溺死させたことを告白している彼女は大人になって洋介(松山ケンイチ)という心優しい男性と知り合い“愛”を知るが、それは殺人衝動の歯止めとはならなかった…。“美しき殺人鬼”として“キッチン・セックス”を求めてくる調理人の男を鍋で頭部を何度も何度も殴打して殺すシーンは特にセンセーショナル! クライマッックスのダムのシーンも実にスリリングだ。

こうして、原罪意識に苛まれるヒロインは、果たしてどこに行き着くのか? 後半、彼女の元同僚というミステリアスな女性(木村多江)が登場し、話はますます錯綜してゆく。ところで“ユリゴコロ”というユニークな題名は心の“拠りどころ”からくるもので、それまで“他人の死”でしか味わえなかったソレが、“愛”に転化してゆくのか、そう簡単にいくわけないだろう、と観客に思わせる。決して、吉高“ユリコ”からくるものではないので、念のため。

 

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