ロシア文化“自粛”の動き!? チャイコフスキー『1812年』が演奏中止に…

モスクワ音楽院にあるチャイコフスキーの胸像 

モスクワ音楽院にあるチャイコフスキーの胸像 (C)VAUko / Shutterstock

いま世界を揺るがしている、ロシアによるウクライナ侵攻。この騒動によって、偉大な音楽家・チャイコフスキーの楽曲が議論の対象になっているようだ。

コトの発端は、ある管弦楽団がツイッターに投稿したお知らせだった。

その投稿は、演奏予定だったチャイコフスキーの序曲『1812年』の演奏中止を知らせるもの。管弦楽団は《現在の世情を踏まえて演奏中止となりました》と報告しており、《楽しみにしていただいていたお客様には大変申し訳ありませんがご理解の程、よろしくお願いいたします》とコメントしている。

「チャイコフスキーは、言わずと知れたロシアの作曲家。『白鳥の湖』や『胡桃割り人形』をはじめとするバレエ音楽や、数々の交響曲を生み出しています。今回、演奏中止になったのは、チャイコフスキーがロシア人であるからではないでしょう。序曲『1812年』は、ナポレオン1世率いるフランス帝国がロシアに侵攻するも、ロシア軍が追い返した『1812年ロシア戦役』を投影した楽曲です。ロシアが戦争に勝利したことを祝った曲であり、曲中には大砲を撃つ場面も。演奏会ではバスドラムに置き替えて演奏されますが、現在の情勢を考慮して演奏中止になったのでしょう」(音楽ライター)

政治は文化の下流にある?

この投稿に対して、ネット上では疑問の声が殺到しており、

《過剰反応すぎませんか?》
《この判断が引き金となって、ロシア文化への抵抗感が国民の間で増していきそうで怖い…》
《「1812年」がロシアの曲だから演奏しないってなると、差別につながってしまうのでは?》
《戦争賛美をする気は毛頭ないのだけれど、このような理由でロシアの音楽が奪われてしまうのは悲しすぎる》
《楽曲に罪はないんだから、堂々と演奏すればいいのにと思ってしまう》
《「1812年」をロシアの正義と読み解くなら演奏中止も分かりますが、理不尽な言いがかりをつけて攻めてきた大国を撃退し、祖国を守る物語として見るなら話は別なのではないでしょうか》
《政治に左右されて音楽が表現できなくなる。このようなやり方は、音楽が政治よりも下だと明らかにすることになるからやってほしくないですね》

といったさまざまな意見が飛び交っていた。

しかし、多くの交響楽団が序曲「1812年」の演奏中止を発表しており、ロシア文化の自粛は後を絶たない。

もちろん侵略戦争は、とてもではないが褒められたものではない。しかし、臭い物に蓋をするような自粛を続けるのならば、また歴史は繰り返してしまうのではないだろうか。

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