佐藤江梨子と瑛太の笑って泣ける格闘技コメディー映画「リングサイド・ストーリー」

映画評論家・秋本鉄次のシネマ道『リングサイド・ストーリー』~~

配給/彩プロ 10月14日より渋谷シネパレスほかで全国公開
監督/武正晴
出演/佐藤江梨子、瑛太、武藤敬司、余貴美子、佐藤二朗ほか

佐藤江梨子の長年のファンとしては、ヨコハマ映画祭主演女優賞に輝いた『腑抜けども、悲しみの愛を見せろ』(2007年)のゴーマンな勘違い女優役、『秋深き』(2008年)の気のいいホステス役など、そのグラマラスなボディーを生かして振り幅の多い役を演じてきた彼女は、もっと評価されていい“演技派”なんだけどなぁ、と思う。

そんなサトエリの4年ぶりの主演作が、安藤サクラが女性ボクサーに扮し、キネ旬主演女優賞などに輝いた傑作『百円の恋』(2014年)の武正晴監督作品となれば“鬼に金棒”の気分ではないか。

共演は、こちらも振り幅の大きい役柄(2011月公開の『光』では橋本マナミ演じる人妻とドロドロのセックスをする肉体労働者役!)で、売れっ子の瑛太。題材は、今回も武監督得意の格闘技が背景だが、サトエリと瑛太による“腐れ縁コメディー”色が強く出て、予想以上の快作になって大いにめでたい。

 

瑛太の佐藤による丁々発止のやりとり

瑛太は、かつて大河ドラマで印象的な役を演じたというのが唯一の栄光で自慢という売れない役者ヒデオ。もう、夢だけは一人前で、口癖は『お前をカンヌ映画祭に連れて行く!』だが、現状は彼を支える同棲相手のカナコ(佐藤)のヒモ同然というトホホな状態。弁当工場のバイトをクビになった彼女を、自分が格闘技好きゆえに格闘技団体のスタッフという新しい仕事に就かせるのだが、しょーもない“男の嫉妬”が原因で、ヒデオは、行きがかり上、ド素人にもかかわらず格闘技に挑戦するハメになるが…。

瑛太のキャラが絶品で、もうコイツ、後ろから蹴り入れたくなるようなダメダメ男、口先男の典型なのに、どこか憎めない、という微妙なサジ加減。一方のサトエリも、気の良いしっかり者キャラで迎え撃つ。ふたりの丁々発止のトークが大いに笑える。「俺、タダで試合見れるじゃん」、「狙いはソコかよ」という瑛太とサトエリのやり取りなんか絶妙で断然オカシイ。

一応、話はオリジナルなのだが、『百円の恋』の脚本家・足立紳が、その昔、嫁さんを格闘技団体で働かせて試合をタダ見しようとしたという“ダメ男エピソード”を武監督らが膨らませたそうだ。武藤敬司率いる実在のプロレス団体『WRESTLE-1』が全面協力。選手たちの日常や試合ぶりもしっかり描かれるのは武監督のこだわりか。そのなかで、水を得た魚のように働くタレ目のサトエリが、実にチャーミング。

後半は、まるで『ロッキー』(1976年)のようだが、甘くはない。ただただ、この“腐れ縁コンビ”にブラボー! と叫びたい。

 

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