共感と郷愁を呼ぶ映画「ポンチョに夜明けの風を受けて」

映画評論家・秋本鉄次のシネマ道『ポンチョに夜明けの風を受けて』

配給/ショウゲート 10月28日より新宿武蔵野館ほかにて全国公開
監督/廣原暁
出演/大賀、中村蒼、矢本悠馬、染谷将太、佐津川愛美ほか

青春とは恥多きもの、それでいいのだ、というような作品で、何だか愛着が涌くなあ。ここに描かれる高校最後の旅となるバカ旅行、あるいは卒業式の変というか、乱というか、の出来事に、もう半世紀近く前の自分の高校ライフを思い起こし、少し照れてしまった。

将来に何の希望も持てない高校最後の悶々たる日々。又八(大賀)、ジン(中村蒼)、ジャンボ(矢本悠)は、ジンの大学受験失敗を受け、ノリで海へ行こうとするが、又八が免許取り立てで運転していたのはジャンボのオヤジ(佐藤二朗)がやっと買ったばかりの愛車セルシオ。その車体に大きな傷を付けてしまい、オヤジに言い訳できねえ、とヤケ度が増加する。

そこに、こちらも実像と虚像のギャップに悩んでヤケ気味のグラビアアイドルの愛(佐津川愛美)がひょんなことから車に乗り込み、さらには風俗嬢のマリア(阿部純子)も加わって、彼らのヤケっぱちドライブは続く…という展開だ。本当は卒業ライブにかける、と言いながらロクに練習しておらず、もうドーでもいいや、みたいな奴らのロード・ムービーなんだから、これくらいのユルさでオッケー。

 

明日よりいまをどう楽しむか

とにかく主演の“三馬鹿トリオ”がイイ。ちょっとやそっとじゃ治らないほどバカなのがイイ。お調子者なのが取り柄のアイツ、悲観的なのが玉にキズのコイツ、チ○コがデカいのだけが自慢のソイツ。青春の悩みは人を大きくする、旅は人間を成長させる、なんて金言はかなりウソっぱちなことが、ヤツら見ているとよく分かって、わが意を得たり。

それに比べると、佐津川、阿部が演じるアイドル、風俗嬢など虚飾の“お仕事”で苦労している女性陣の何とクールなことヨ。安易にこの男どもと交わらないのも納得で、何の未練もなく、単にヒマつぶしでこのドライブを面白がっただけ、バイバ~イと中盤で退場してしまうのも潔い。廣原監督はまだ30歳チョイチョイ。ハッピーでもなく、かといって悲惨でもない青春をまだ描ける世代なのだろう。この感覚、いいゾ。

そして、彼らのダチだけど、ひとりマイペースで、勝手にドライブ行っちゃった彼らを待つ中田を演じる染谷将太が、クライマックスの卒業ライブをかっさらうあたりのフェイントがお見事。ロックバンド“忘れらんねえよ”が歌う主題歌『明日なんかどうでもいい』が彼らの気分を代弁する。ホント、明日なんかより、いまをどう楽しむか。オジサン世代の若いころもそう思ってたフシがある。若い世代には共感を、オールド世代には郷愁を呼ぶ“青春映画”の誕生を祝したい。

 

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