映画「女になる」性同一障害から性別適応手術へ歩む姿を軽やかに描く

映画評論家・秋本鉄次のシネマ道『女になる』

配給/オリオフィルムズ 10月28日より新宿K’s cinemaにて単館公開
監督/田中幸夫
出演/未悠、みむ、Naoほか

たまにはドキュメンタリー映画もどうだろうか。いまの世の中で語るべき、知るべきことをナマの姿で捉えている作品も多い。これは子供のころから女性になることを夢見ていた性同一障害の未悠(みゆ)が、大学3回生の春休み、女性として社会に出るため、念願の性別適合手術を受けることになった半年間を追ったもの。淡々とした描写で、悲壮感を煽ることなく、むしろ軽やかなタッチで描いているところに好感が持てた。

ボクは個人的には、たとえ百回生まれ変わっても男がいい、女性を異性とする性が好き、と思っているが、それと同じような気持ちで、たまたま男に生まれたけれど“女になる”ことを願う人もいるだろう。その逆の女に生まれたけどぜひ男に、という人もいるだろうし、女もいいけど男も好き、という“器用”な人もいるだろう。

LGBT(レズ、ゲイなどの性的マイノリティー)の専門家によると、LGBTの割合はAB型、左利きと同じ8%だそうだ。ボクは左利きだしね。な~んだ、割と普通じゃん、と思う。その感覚が大切。世間的偏見の中で、前を向いて進もうとする未悠とそれをフォローする人たちが、親も含め、ほとんどみんな前向きなのがイイ。

 

「別適合手術をするわたしを撮ってほしい」

ドキュメンタリー分野のベテラン、田中監督の元に、未悠が「半年後に性別適合手術をするわたしを撮ってほしい。私のような子を応援したいから」と直談判してきたのがこの作品のきっかけだという。冒頭に映画『卒業』(1967年)に使われた名曲『スカボロー・フェアー』が流れるので、この監督、同世代か? と思ったら案の定、同じ年で親近感を覚えた。性同一障害同士の“女子大生”との“女子会トーク”での下ネタ満載の本音の部分が聴きもの。このシーン、好きだね。こういうあけすけなところもちゃんと描写する。“彼女たち”を単に社会的弱者としないところがお値打ちだ。

もちろん、彼女たちだけでは持たないから、肉付けとして、臨床心理士の思いとか、医師の覚悟とか、LGBT関係者によるパートナーズ婚の奨励とかが描かれる。未悠はきっと“幸せ者”だ。だが、それは自らの意志でつかみ取ったもの。この『女になる』を見ながら、改めて“男でイイ”と思った。根っこは同じ。人間にとって選択肢は多いに越したことはない。その中で自分を確認して決めりゃいい。多様性を認め合う社会の方が住みやすいに決まっているからだ。

さて貴女は、貴方は、どう思う?

 

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