『パリピ孔明』ゲリラライブ描写に批判殺到!?“リアリティライン”が試される令和アニメ

『パリピ孔明』ゲリラライブ描写に批判殺到!?“リアリティライン”が試される令和アニメ

『パリピ孔明』ゲリラライブ描写に批判殺到!?“リアリティライン”が試される令和アニメ (C)PIXTA

アニメ『パリピ孔明』の第11話で放送された、渋谷のど真ん中でゲリラライブをする描写が物議を醸している。フィクションで描かれる違法行為にも厳しい目が向けられる昨今、今後のアニメ作りでは“リアリティライン”の設定が重要視されそうだ。

フィクションの迷惑行為が許せない?

問題の「パリピ孔明」第11話を簡単に説明すると、まず物語の中心として描かれているのは、『サマーソニア』という音楽フェスへの出場権を賭けた10万イイネ企画。SNSで10万イイネを稼いだアーティストが出場権を得る企画だが、敵対するガールズバンド『AZALEA』は、金の力でイイネを集める策に出る。

その策とは、「AZALEA」のゲリラライブのQRを読み取り、特設サイトでイイネすることで、抽選で100万円が当たるプレゼント企画を行うもの。ゲリラライブの場所は“渋谷のどこか”としか明かされていなかったため、当日には多くの人々が渋谷に殺到した。

対する孔明は100万円企画で人が集まっている状況を利用し、先手を打って渋谷でゲリラライブを敢行。先に10万イイネを集めてしまおうという狙いだ。

まさに「赤壁の戦い」の10万本の矢。孔明が軍略で月見英子というシンガーのマネージメントをする「パリピ孔明」らしい展開だが、“迷惑行為”だとマジレスする視聴者が続出し、ちょっとした炎上騒動に発展してしまった。

昨今の視聴者がいろいろと過敏になっていることが分かるが、実は同じような描写があっても、炎上する作品としない作品が存在する。その違いは、「リアリティライン」にあるという。

迷惑行為が炎上する作品としない作品

フィクションにおける迷惑行為、または違法行為といえば、新海誠の監督作『天気の子』もSNSなどで問題視されていた。同作では主人公が線路に侵入したり、拳銃を打ったりするシーンがあるのだが、《反社会的な行動が多すぎ》といったクレームが殺到。そして大体この頃から、アニメファンの間でリアリティラインという概念がよく語られるようになった。

ここでいうリアリティラインとは、ざっくりいえば物語全体の“現実感”のレベル。そして作品の雰囲気が現実に近く、リアリティラインが高い作品ほど、迷惑行為や違法行為の描写が不快に思われやすいようだ。

たとえばゲリラライブに関しては、アニメ『ゾンビランドサガ』でも“唐津駅”という実在する場所でのゲリラライブが描かれていた。それどころか注意しにきた警察から逃亡したり、逆に警官が警告もなしに拳銃を発泡する描写があったりと、やりたい放題。それにもかかわらず、同作には違法行為などを指摘するクレームがほとんどなかった。

理由としては、序盤から現実では有り得ない描写を連発することで、リアリティラインを上手に調整していたからだろう。渋谷に比べて佐賀県の唐津駅は人が少ない…という理由だけではないはずだ。

より極端な例を出せば、『ドラゴンボール』などのバトル漫画の中では、時として殺人も許される。一方で世界観や人物描写が現実に近いアニメ『スーパーカブ』では、主人公が“2人乗り”しただけで炎上にまで発展してしまった。

孔明が現実世界で無茶苦茶なことをするのが魅力の「パリピ孔明」だが、それをやるにはリアリティラインが高すぎてしまったのかも。ただ、ファンタジーに寄りすぎても共感できない作品になるだけなので、バランスをとるのは非常に難しそうだ。

文=大上賢一

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