11月26日は『いい風呂の日』(日本浴用剤工業会制定)です。
1960~1970年代半ば、私が幼少期を過ごした東京下町では、まだ一般家庭にお風呂は普及しておらず、私を含め、ほとんどの級友たちは銭湯に通っていた時代でした。
そのころの下町の銭湯は、子供にとって遊び場のようなもので、私もどんなおもちゃを持っていこうか昼間からワクワクしながら考えていたものです。
そんなわけで、このころはお風呂用の玩具需要が高く、玩具メーカーもさまざまな「水ものトイ」を開発・販売していました。
1969年に『玩具アイデア大賞』、『ニューヨーク国際新製品展金賞』をW受賞したのがバンダイの『わんぱく親子イルカ』でした。
3年連続のベストセラーだそうですから、このころの水もの(お風呂用)トイの需要がいかに大きかったかが分かります。ちなみに、なぜイルカなのかというと、当時、アメリカのテレビドラマ『わんぱくフリッパー』が大人気だったからです。
大ヒットした『わんぱく親子イルカ』に続け! とばかりバンダイが1970年の夏に発売した意欲作が、この『たこのピンちゃん』です。
山高帽をかぶったタコという何ともユニークな外見。スイッチを入れると、ひょこひょこと歩きます。そのまま浴槽にドボン。すると横穴から水を噴出し、回転しながら泳ぎます。そして、口からはピューッと元気に水を吹き出す…という具合の実に凝った仕掛け。バンダイの力の入れようが分かります。
なぜ山高帽をかぶっているのかというと、当時、デビュー曲の『恋の季節』が大ヒットし、人気を博していた5人組ポップスグループ『ピンキーとキラーズ』のトレードマークが山高帽だったからだと思われます。名前の「ピンちゃん」も、おそらく同グループ名からいただいたものでしょう。
『親子イルカ』同様、人気者にあやかれ! というわけです。このあたりは今も変わらないバンダイのお家芸ですね。
しかし、当時、この玩具の評判を耳にすることはありませんでした。タコと人気グループとの関係性がイマイチ“ピン”とこなかったからかもしれません。今の私からみると、たまらなく魅力的なおもちゃなんですけどねぇ。
さて、銭湯でひとしきり遊んだ後は、銭湯の前に出ていたおでんの屋台でよく立ち食いしたっけ。つゆのしっかり染みたタコ、おいしかったなぁ。
(写真・文/おおこしたかのぶ)
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