人間の奥深さを味わうことになる映画「光」

映画評論家・秋本鉄次のシネマ道『光』

配給/ファントム・フィルム 11月25日より新宿武蔵野館ほか全国公開
監督/大森立嗣
出演/井浦新、瑛太、橋本マナミ、長谷川京子、平田満ほか

この春にも『光』という同題名の全く別の映画があったので紛らわしいが、こちらは『舟を編む』など映画化作も多いベストセラー作家・三浦しをんの原作のなかでも異彩を放ち、最も残酷で暴力的な作品が原作。監督の大森立嗣といえば、最近“降板、休養、激ヤセ”と話題になっている真木よう子が“全裸熱演”した『さよなら渓谷』(2013年)が鮮烈だった(ちなみにボクのこの年のベストワン!)。過去にワケありの哀しき男女の業を撮らせたら当代一ではないか。

子供時代、故郷の離島で“忌まわしい事件”を体験した男ふたり、女ひとりの3人は、やがて成長し、都会で運命の出会いののち、歪んだ愛と狂気の世界に踏み入る…。普通の家庭人となった男に井浦新。彼に執着し、その妻(橋本マナミ)を籠絡し“真昼の情事”にふける粗野な男に瑛太。過去を隠し女優になった女に長谷川京子と配役の妙が味わえる。特に、不精髭のすさんだ肉体労働者というこれまでにない役柄に挑んだ瑛太がイイ。最近も『リングサイド・ストーリー』、『ミックス』と軽妙な役が得意だが、ここでは一転、ダークな役柄。すでに三十路半ばだし、新境地に踏み込んで当たり前か。

 

マナミとハセキョー「競艶」

その“新境地”を見せるのが、ストレス人妻の橋本との“からみ”で、これがいかにもねっとりとイヤラシイ。さすが『さよなら渓谷』の冒頭で、真木よう子の真昼の営みを極エロに撮った大森監督だけのことはある。それまでゴージャスな愛人イメージだった橋本がすっぴんに近いメークで、所帯やつれしながらも、荒々しい髭ヅラの肉体労働者にからみつき、くんずほぐれつ汗まみれの情事を繰り返すのだからワイセツ感たっぷり。特に、お互い舌を使ったテクニックと『俺たち“おしゃぶり”好きだよな』とか瑛太の言葉責めの描写に結構興奮した。橋本が台所に全裸で立つ後ろ姿の艶尻は、形、色艶、ほど良い大きさも含め、絶品だった。

一方、長谷川京子も“枕営業”までして芸能界でのし上がってきた女優に挑んでいる。これまでのお上品イメージをかなぐり捨て、井浦新扮する幼なじみと再会し“秘密を共有する”同士のように肌を合わせるのだ。

マナミとハセキョー“競艶”の不倫映画、という興味で構わない。ボクもその興味でまず見たひとりだし。だが、見終われば、その奥にある、人間だけが放つ(特に激烈な経験をした者のみが)不協和音と、それでも人間はいとおしい、という感情を味わえる。冒頭とラストに登場する奇怪な形状の樹木にもインパクトを感じるはず。

 

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