『Iceberg Chart』という言葉をご存知だろうか? 直訳すると「氷山の図」という意味を持つこのミームは、映画や料理、洋服のブランドにいたるまで、そのジャンルにおける物ごとのマニア度をランク付けした画像だ。
海外のSNSや掲示板などで目にする機会が増えたミームだが、中でも「Reddit」では「日本アニメ版Iceberg Chart」が爆誕。そのシュールな内容が注目を集めている。
海外オタクの共感しがたいアニメ観
「Iceberg Chart」は、海上と水中で大きく見え方が異なる「氷山」をベースとしている。メジャー作品として海上のごく一部がもてはやされる一方で、水中にはその深度に応じて、よりマニアックな作品が眠っている…という世界観だ。
日本アニメ版のランク付けを見てみると、一般向けとして挙がっているのは、『DRAGON BALL』や『ポケットモンスター』、『鉄腕アトム』といった作品。いずれもレジェンド的な人気作であり、日本人にとっても納得がいく選出だろう。
しかし深度が下がると、途端にランク付けの胡散臭さが高まっていく。たとえばハードコアオタク向けの欄には、ほのぼのとしたファミリーアニメの『ちびまる子ちゃん』が。さらに最もヤバいディープオタク向けアニメの層には、『サザエさん』や『おじゃる丸』がランクインしている。
「日本アニメ版Iceberg Chart」は有志によっていくつも作られているが、とあるランクでは、『ガンダム』シリーズのマニア度が「Normie」(素人、パンピー)扱いに。多少なり“ネタ”なのかもしれないが、国内外でいろいろと感覚のズレはありそうだ。
アニメのローカライズが原因?
とはいえ、海外オタクが“にわか”というわけでは決してない。何十年も昔のマニアックなOVAや、廃盤になったアートフィルムなど、“いかにも”な作品の名前もしっかりとランク付けされているからだ。その謎めいた世界観に、日本人オタクからは《海外のマニア観がよくわからない》と困惑の声も上がっている。
少し真面目に考えてみると、こうしたすれ違いの背景としては、おそらくローカライズの問題が存在する。日本のアニメが海外に輸出される際には、現地の文化に馴染ませるように調整が加えられるのが通例。しかし「サザエさん」や「ちびまる子ちゃん」といった作品はローカライズが難しいためか、海外ではあまり受容される機会がない。そのため日本ではお茶の間で見れる“国民的アニメ”であっても、マニア向けの扱いを受けてしまう…のかもしれない。
逆にアニメ以外に目を向けると、日本の市場でも同じことは起こっている。たとえば音楽業界では、日本でだけ売れていないミュージシャンを指す「スモール・イン・ジャパン」という言い方が存在するように、海外との受容ギャップがたしかにある。
ただ、そんなギャップに満ちたグローバル世界において、あまり扱いが変わらないものも。「Iceberg Chart」において、萌え系アニメは大抵ディープなオタク向けとして位置づけられている。萌え系オタクの立ち位置は、ほとんど万国共通なのだろう。
文=富岳良
【画像】
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