『ゴールデンカムイ』最終巻の加筆に賛否! 鶴見中尉の“死”を巡ってひと悶着

『ゴールデンカムイ』最終巻の加筆に賛否! 鶴見中尉の“死”を巡ってひと悶着

『ゴールデンカムイ』最終巻の加筆に賛否! 鶴見中尉の“死”を巡ってひと悶着 (C)PIXTA

大人気漫画『ゴールデンカムイ』の最終巻となる31巻が、7月19日に発売された。『ヤングジャンプ』に掲載された連載版から大幅な加筆が行われているのだが、その内容をめぐって、ファンからは賛否両論の反応が相次いでいる。

※『ゴールデンカムイ』最終話に触れています

争点となっているのは、作中終盤で描かれたエピローグの内容。そこでは最終決戦の果てに、杉元佐一と鶴見中尉が汽車の暴走に巻き込まれ、海に沈んでいくシーンが描かれている。

最終話では杉元の生存が判明したが、鶴見は一切姿を現さず、生死が明かされていなかった状態。銃で胸を撃ち抜かれ、汽車に押し潰されるように海に落ちているため、常人なら到底生きられるとは思えないところだ。

しかしコミックス31巻では、意外な描写が注目を集めることに。巻末には太平洋戦争末期のダグラス・マッカーサーと、ある日本人にまつわるエピソードが収録されているのだが、ラストのコマに謎めいた老紳士の姿が映り込んでいた。その頭にはトレードマークの額当てがあったため、“鶴見”だと確信されているようだ。

金塊争奪戦の舞台は明治時代後期。太平洋戦争の終結は約40年後の出来事なので、鶴見は80歳くらいまで長生きしたのだろうか。

これに気づいたファンからは、《鶴見中尉が生きてた!? 本当によかった…》《不死身の鶴見中尉だ!》《鶴見中尉生存の演出が粋すぎて鳥肌たったわ》と歓喜の声が飛び交っている。

生存ルートにモヤモヤする読者たち

その一方で、鶴見の生存を手放しに喜べない読者も少なくない。というのも彼は物語において多くの犠牲を払いながら、深い業を背負うキャラとして描かれてきた。最後に“死”という結末を迎えることで、ようやくそれがチャラになったという見方もできるだろう。

そうした見方からすると、鶴見の生存はやや蛇足めいた印象があるのかもしれない。実際にネット上では、《鶴見は死んでこそ完成するキャラだろ》《蛇足に思えるし鶴見の加筆はガッカリ》といった不満の声も上がっていた。

さらに鶴見の生存は、なぜか尾形百之助ファンにまで怒りをもたらすことに。連載中は尾形の死もハッキリとは描かれず、ヴァシリの絵画によって間接的に死が仄めかされたのみ。とはいえ致死性の毒をくらい、頭部に銃弾を受けたため、生存の望みは限りなく薄かった。

ところが同じく死んでもおかしくない鶴見が生き延びたため、一部の尾形ファンは納得いかない様子。《師団で誰も死なず尾形だけ逝ったのならそれは飲み込めない》《これなら別に尾形生存のほうに傾けた加筆あったっていいのに》と、疑問を呈する声が上がっている。

とはいえ考察の余地があることで、完結後も「ゴールデンカムイ」を楽しめるのはうれしいところ。鶴見や尾形の結末は、読者の数だけあるのかもしれない。

文=野木

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