安倍元首相の事件を連想? ジャンプ+読み切り『火遊び同盟』の“自作銃”に物議

安倍元首相の事件を連想? ジャンプ+読み切り『火遊び同盟』の“自作銃”に物議

安倍元首相の事件を連想? ジャンプ+読み切り『火遊び同盟』の“自作銃”に物議 (C)PIXTA

いろいろな意味で世間を騒がせることの多い、『ジャンプ+』の読み切り作品。7月24日に掲載された『火遊び同盟』もまた、SNS上でちょっとした物議を醸しているようだ。その原因は、タイムリーすぎる“自作銃”の描写にある。

※『火遊び同盟』の内容に触れています

同作の主人公・カズトは、いじめられっ子の高校生。ある日彼は、クラスで折った千羽鶴を渡しに行ったことから、難病で機械なしには生きられない少女・佐藤アキと出会う。

アキは自分を取り巻く世界すべてに憎悪を燃やしており、千羽鶴にも激怒。カズトはそんな彼女のために、千羽鶴を燃やしてみせる。そこから、2人の危険な“火遊び”がエスカレートし始める…。

作中ではセンセーショナルな物語が展開されるのだが、なにより議論を呼んだのは、武器にまつわる描写だ。カズトは本好きの少年で、アキの希望によって危険物を次々と自作していく。そしてその中には電気式の自作銃も含まれており、ただ制作するだけでなく、いじめっ子に向けて発砲するシーンも…。

同時代の読者たちに届く作品の力

現在世間で「自作銃」が大きな注目を集めていることは間違いない。7月8日に起きた安倍晋三元首相の銃撃事件において、犯人は鉄パイプなどを使用した銃を自作し、それによって犯行に及んでいた。

「火遊び同盟」に出てくる銃は同じ製法ではないものの、世界中に衝撃を与えた事件からまだ日が浅いこともあり、ネット上をざわつかせることに。公開タイミングなどの配慮が必要だったとする人も多く、《この内容を例の事件の直後に掲載してしまうのはさすがにどうかと…》《「素人が武器を自作して嫌いな人に発砲する」というのは安倍元首相の痛ましい事件をどうしても連想され不快感を覚えました》といった声が上がっている。

しかしその一方、批判が目に見える状況下で、あえて掲載に踏みきった編集部の勇気を称える人も。《このタイミングで自作銃の話を載せる集英社の胆力やばすぎる》《このご時世に自作銃で人を撃つマンガを掲載するのはチャレンジャー》と評価する声も少なくない。

「ジャンプ+」といえば、昨年7月には藤本タツキの『ルックバック』が現実の事件を想起させるとして議論を呼ぶことに。公開日が、京都アニメーション放火事件が起きた7月18日の翌日だったこともあり、鎮魂などの意図があるものと推測されていた。

今回の「火遊び同盟」は事件発生から掲載までの期間が約2週間しかないため、さすがに意図的ではないだろう。ただ、すぐれた創作物は不思議と時代とシンクロするものだ。「現実とフィクションは関係ない」などと言って目を逸らすのではなく、このタイミングで作品が公開された事実と向き合うことも大切ではないだろうか。

文=野木

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