言わずと知れた超有名スタジオである『マーベル・スタジオ』。制作を手掛けた全作品の興行収入を合わせると合計250億ドルを超えるほどの規模であり、世界で最も影響力のある映画スタジオと言っても過言ではない。
しかしそんな“最高峰の映画スタジオ”が、実はクリエイターにとって地獄の環境だったことが判明してしまった。
本物のヴィランは「マーベル・スタジオ」?
ことの発端になったのは、海外掲示板「reddit」に書かれたVFXアーティストの書き込み。その人物は「マーベルの番組に取り組むのはうんざりしている」と嘆き、意外な実情を暴露していた。
どうやら実現不可能なほどのタイトな納品スケジュールを押し付けられることが多く、莫大な予算があることを盾に、いとも簡単にリテイクが発生するとのこと。そうしたストレスフルな環境から、大の大人が壁を殴ったり、モニターを投げたりすることもあるという。
報酬は良いものの、ハードな制作環境に精神を病んで退職する人間も多いそう。この書き込みを受けて、SNS上では似たような体験をしたアーティストの恨み辛みが広がる事態となっていた。
救世主となる日本のアニメスタジオ
これまで日本のアニメ制作現場はブラックだと言われており、ことあるごとに「海外を見習え」と主張されてきた。しかし蓋を開けてみれば、海外の環境も似たり寄ったりのようだ。
むしろネット上では、海外の大手スタジオの悪評をこれまで聞かなかったのは、その権力構造からネガティブな声がかき消されていただけではないか…とも推測されている。
その一方で、今までネガティヴな噂しか聞かなかった日本のアニメ会社に業界の未来を見出す人も。実際に、いくつかの制作会社は近年、著しい待遇改善を進めているようだ。
『呪術廻戦』や『進撃の巨人』といったヒット作を手がけるMAPPAは、雇用形態の改善に取り組み、一般的な福利厚生はもちろん他業種の平均を超える給与水準へ。また、『SPY×FAMILY』のClover Worksや、スタジオジブリの元スタッフが立ち上げたスタジオポノックなども、平均的なサラリーマンの契約と比べて遜色のない内容に変更されていた。
さらに他のアニメ会社にしても、数年前と比べると、確実に良好な環境づくりへと舵を切っている。
世界有数の映画スタジオがブラック労働ややりがい搾取の温床となっている今、日本のアニメ会社がまさかの逆転勝利を果たす時代が来るかもしれない。
文=富岳良
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