『スマブラ』誕生のウラに格闘ゲームの存在…桜井政博が語った“コンボ論”に共感の声

『スマブラ』誕生のウラに格闘ゲームの存在…桜井政博が語った“コンボ論”に共感の声

『スマブラ』誕生のウラに格闘ゲームの存在…桜井政博が語った“コンボ論”に共感の声 (C)PIXTA

『ストリートファイターII』などに携わった有名ゲームプロデューサー・岡本吉起氏のYouTubeチャンネルに、『大乱闘スマッシュブラザーズ』の生みの親である桜井政博氏が出演。桜井氏が語った“格闘ゲームとコンボ”に関する考え方に、注目が集まったようだ。

コンボからの脱却で生まれた「スマブラ」

動画の中で桜井氏は、『スマブラ』を開発するに至った経緯について説明。『ストII』をはじめたとした格闘ゲームというジャンルについて、桜井氏は「人対人の駆け引きの中で当時最高のもの」「駆け引きの塊」という印象を持っていたという。

しかしある時を境に、格闘ゲーム界隈では“コンボ”が流行。それに対して、桜井氏は「コンボはゲームの巧さではあるけれど駆け引きではない」と否定的だった模様。コンボの概念について、桜井氏は「やられる側としてはちっとも面白くない時間っていうのが長く続くわけですよね」とも語っていた。

そんな桜井氏が閃いたのが、“やられた側のリアクションが毎回違えばいい”という発想。従来の格闘ゲームは、どのような局面でもダメージに対するキャラクターの反応が一定だが、ダメージの蓄積によってリアクションが変わればコンボから脱却できるのではないか…。

こうして生まれたのが、ダメージの蓄積によってキャラクターのふっとび率が変わる「スマブラ」だったのだという。

桜井氏が語ったコンボについての考え方に、ゲーマーからは《自分が格ゲーやめてたときの心境そのまんま代弁してくれたような感じ》といった絶賛の声が多数。昨今では当たり前とされている格ゲーにおけるコンボを、疎ましく思っていた人は多いようだ。

実際の対戦環境において、「スマブラ」シリーズがコンボから脱却できていたかどうかはさておき、たしかに格ゲーとコンボ問題に関する1つの解決策であったとは言えるだろう。

もちろん、アイスクライマーの永久コンボに代表される明らかな“調整ミス”は存在するが、ゲーム全体として、ふっとび率蓄積システムがコンボの難易度を上げていたことは確かだ。

ちなみに格ゲーとコンボ問題に関しては、他の作品でもさまざまな対策が試みられてきた。

格ゲー業界とコンボの戦いの歴史

たとえば代表的なのは、『ギルティギア』シリーズなどで採用されている“重力補正”。簡単に言えば、コンボのヒット数が増えるほど相手が重くなるというものだ。

しかし同じく重力補正を採用した『Fate/unlimited codes』は、格ゲー史の中でも類を見ないほどコンボが長いゲームになってしまったので、根本的な解決には至っていない。

相手のコンボ中に使用できる「サイクバースト」は格ゲーに革命をもたらしたが、一試合に何度も使えるシステムではなく、結局のところは「永久対策」や「即死対策」に収まっている印象。

他にも格ゲー業界ではコンボを続けると相手ののけぞり時間や受け身不能が短くなったり、一定のヒット数でコンボが強制終了するシステムなどが開発されたが、それでも長いコンボが見つかってしまうのが不思議なところだ。

ただコンボを一切不可能にすると、行動ごとのリスク&リターンに差がなくなり、運の要素が強くなってしまうのが難しいところ。たとえば子どもの遊びとしてお馴染みの「グリコじゃんけん」は、グーで勝った時とパーorチョキで勝った時のリターンに差があるからこそ駆け引きが生まれる。格ゲーにおける読み合いとコンボの関係も、似たようなものだ。

格闘ゲームが“ちょうどいいコンボ”に至る日はくるのだろうか。今後の開発に注目したい。

文=大上賢一

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