はしだのりひこ氏を悼ぶ…大島渚監督の「最怪作」な映画

作品目『帰って来たヨッパライ』

松竹/1968年
監督/大島渚
出演/ザ・フォーク・クルセダーズ、緑魔子、渡辺文雄、佐藤慶ほか

中高年世代には懐かしい元『ザ・フォーク・クルセダーズ』のはしだのりひこ氏が、先ごろパーキンソン病のため京都市内の病院で死去した。72歳だった。真っ先に思い出したのは『悲しくてやりきれない』、『花嫁』などの名曲ではなく、きたやまおさむ、加藤和彦(2009年死去、享年62)とともに初期の1967年にヒットを飛ばした『帰って来たヨッパライ』だった。♪天国よいとこ、一度はおいで、酒はうまいし、ネエちゃんはキレイだ~のフレーズが、当時まだミドル・ティーンのボクは大好きで、よく口ずさんでいたものだ。

この曲のヒットにあやかって映画にしたのがこの作品。当時はヒット曲が生まれるとすぐ映画化するのが邦画界の常であった。そんな一見お手軽そうなこの“歌謡映画”を撮ったのが、その後“世界のオオシマ”と呼ばれるまでになった『戦場のメリー・クリスマス』(1983年)などの巨匠・大島渚なのだから、ビックリ。すでに故人だが、異色作、問題作多数の彼の監督作品歴の中でもひときわ異彩を放つ“怪作”と言える。『え~、何? この映画』って思うこと請け合いだ。でも、映画化するならぜひ大島監督の手でと推したのは、はしだ氏ら“フォー・クル”の連中だったというから二度オドロキ。

 

「世の中に比べて進み過ぎた映画でした」

海辺でフォーク・クルセダーズの3人(大ノッポ=加藤和彦、中ノッポ=きたやまおさむ、そしてチビ=はしだという配役)が遊んでいると、そこに現れた韓国から密航してきた兵士と少年に服を盗まれ、警察などにその密航者と間違われ、逃げ回るというお話なのだが、これが一筋縄ではいかない。物語の途中で突然、元の海辺のシーンに戻る、という変わった手法で撮ったため、観客はフィルムのかけ違いか、と騒ぎだしたという。監督は、物事には裏と表がある、ということを描きたかったそうだ。

おまけに、当時のベトナム戦争問題や日韓の民族問題などもブチ込み、ハチャメチャな内容になってしまった。配給元の松竹は「大島渚の映画は二度と配給しない!」と激怒したそうだが、1983年の『戦メリ』は松竹配給だった。

ボクはこの不条理感が、ヒット曲『帰って来たヨッパライ』のシュール感とマッチして、決して嫌いじゃないが、混乱映画であることは間違いない。「世の中に比べて進み過ぎた映画でした」と監督は語っている。そうなると、今見るとちょうどいいんじゃないか。日韓で揺れているし、キナクサい匂いのする世相だしね。はしだのりひこ氏追悼の意味も込めて、この機会にぜひご覧いただきたい。

(映画評論家・秋本鉄次)

 

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