井浦新と黒川芽以の「肌が合う」感じが素敵な大人のラブストーリー映画

映画評論家・秋本鉄次のシネマ道『二十六夜待ち』

配給/スローラーナー、フルモテルモ テアトル新宿にてレイトロードショー公開中
監督/越川道夫
出演/井浦新、黒川芽以、山田真歩、諏訪太郎、鈴木慶一ほか

知名度抜群じゃないが、ご贔屓女優のひとりに黒川芽以がいる。子役のころから数えてもう“20年選手”の美人女優だ。知っている人は知っている。知らない人はこの際、覚えてほしい。『僕たちは世界を変えることができない』(2011年)で、ぶっきらぼうだが、キチンとしているデリヘル嬢の役が印象的でそれ以来お気に入り。最近では『ドライブイン蒲生』(2014年)、『愛を語れば変態ですか』(2015年)など、エッジの利いた映画で主役を張った。ルックス的には瀬戸朝香が少し不貞腐れてヤサグレ感を漂わせた感じ(褒めています)。

そんな彼女が、三十路を前に挑んだこの映画では、打って変わって、しっぽりと、ゆっくりと、町の片隅で惹かれ合う大人の男女の情感を静かに醸し出している。震災で何もかも失い、心に傷を負った由実(黒川)は“外へ出なくちゃ”と叔母に促され、小さな飲み屋で働くことに。店主の杉谷(井浦新)は記憶喪失者だが、料理のことは手が覚えており、店を任されていたのだ。あたかも“月”と“波”が引き合うように、ふたりは少しずつ寄り添ってゆく…。

 

長い時間をかけて結ばれるふたりが愛おしくなる

相手役の井浦もボクのご贔屓男優のひとりで、2017年秋の『光』(大森立嗣監督)でもイイ味を出していた。女性との絡みも縁がある男優で、印象深いのは、今をときめく石田ゆり子と映画『悼む人』(2015年)やテレビドラマ『コントレール~罪と恋~』(NHK)で共演していること。観ながら思わずこの2人“肌が合うなあ”と感じたっけ。その肌感覚は今回の、わが黒川嬢とも変わらない。ちょっぴり嫉妬してしまったほどで、この際“生まれ変わったら井浦新になりたい”と世迷い言を吐きたくなるくらい。それほどに、長回しの画面に繰り広げられるこのふたりの“絡み”はナマっぽく、ボクは年甲斐もなく身を乗り出てしまった。R-18指定はダテじゃないぞ。

辛い記憶しか持てない女と記憶を持てないことに苦悩する男。傷ついた寄る辺なき魂の持ち主の男女が、セックスも“一歩下がって二歩進む”みたいな、まだるっこしいほどの時間をかけてやっと結ばれたりする。その“時間”がボクはいとおしい。ホテルの窓から見える“二十六夜”の月(観音様が宿り、拝むと幸運が訪れるとされる)を見つめるクライマックスでは、やっとここまで彼らはたどり着いたか、という安堵感に包まれる。

監督は、満島ひかりのフルヌードが話題になった2017年夏の『海辺の生と死』などの越川道夫。そんな越川監督にとっても、黒川芽以にとってもこれは代表作となろう。年末年始、賑やかな大作が多いが、こういう小品でしっぽりするのもオツじゃないのかな。

 

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