いよいよ公開が目前に迫ってきた映画『シン・仮面ライダー』。庵野秀明が手掛ける新時代の「仮面ライダー」ということで、特撮ファンの間でも大きな注目が集まっている。
しかし一部では、映画『シン・ウルトラマン』のように失敗するのではないか、などと不安視する人も…。
“こだわり”が裏目に出た『シン・ウルトラマン』
かねてより「ウルトラマン」シリーズのファンを公言していた庵野。思い入れが強かったせいか、「シン・ウルトラマン」では至るところに原作を尊重した描写が見られた。
分かりやすいのは、ウルトラマンのデザインに関するものだ。
当時ウルトラマンの初期デザインを手掛けた成田亨氏は、カラータイマーやスーツ着脱用ファスナーを隠す背びれなど、のちに追加された要素をひどく嫌っていたという。
庵野は「ウルトラマンの美しさに少しでも近づきたい」といった想いから、成田氏の初期デザインを尊重したウルトラマンを作り上げたのである。
しかし問いたい…。このウルトラマンは本当にカッコいいだろうか?
いや、カッコよさを追求していたわけではないのかもしれない。だが「視覚的に分かりやすくするためカラータイマーをつけた」「背びれはファスナーを隠すため仕方なく追加したものだ」などと言われても、それは業界の“裏事情”的な話でしかなく、多くの人にとってウルトラマンの代名詞は“カラータイマー”なのだ。
実際に「シン・ウルトラマン」のデザインが公開された際、ネット上で不評の声が相次いでいたのは言うまでもないだろう。
余談だが、作中でウルトラマンがダメージを負い、赤いラインが緑に変色する一幕があった。これには「じゃあカラータイマーでよかっただろ!」とツッコまずにはいられない…。
“原作を尊重”といえば聞こえはいいが、それよりも世間は2022年の技術で生まれ変わった先進的なウルトラマンが見たかったはずである。
クオリティの低いCGを使うくらいなら、はじめからスーツアクターを使って作品を制作するべきだったのではないだろうか。
『シン・仮面ライダー』を成功に導くためには…
公開当時から、あまり評判が良くなかった「シン・ウルトラマン」。11月18日に「Amazon Prime Video」で配信がスタートした際も、やはり不評の声が相次いでいた。
この状況を、庵野をはじめ映画「シン・仮面ライダー」の制作陣は重く受け止めてほしいところ。同作を成功に導くためには、「シン・ウルトラマン」の失敗から学ぶ必要があるだろう。
たとえば『シン・ゴジラ』は、未確認巨大生物に対して政府はどう動いていくのか…といったリアル路線が見事にハマっていた。
対して「シン・ウルトラマン」は、そのリアル路線も失敗だったように思える。なぜなら政府がどう動こうとも、結局最後にはウルトラマンが何とかしてくれるのだから…。
むしろ「シン・ウルトラマン」は、少年たちを虜にするような熱血路線の方が良かったかもしれない。
そう考えるなら「シン・仮面ライダー」も変に大人向けの作品にせず、子どもも楽しめる物語展開にすべきだろう。派手な戦闘シーンがあれば、海外で評価される可能性もあるのだ。
「シン」シリーズは、もともと万人受けを狙った作品ではないとも言える。ただ『アベンジャーズ』が世界的にヒットしている現状を見ると、世間が求めているものは意外にシンプルなのかもしれない。
文=うしろだよしこ
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