賃貸物件「敷金の返還」で借主が払うのはどこまで?

xiangtao / PIXTA(ピクスタ)

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賃貸住宅の退去時の敷金返還に関するトラブルは相変わらず多い。賃貸住宅の敷金や、原状回復を巡るトラブルは、国民生活センターに寄せられるものだけで年間1万件を超える。普通に暮らす上で避けられない傷や汚れまで、入居者負担で修繕しようとする家主や不動産業者がいるからだ。敷金返還の原則を知っていれば、余分な費用負担を避けられる。

国土交通省はガイドラインで、《原状回復とは、賃借人の居住、使用により発生した建物価値の減少のうち、賃借人の故意・過失、善管注意義務違反、その他通常の使用を超えるような使用による損耗・毀損を復旧すること》と定義している。この定義に当てはまる原状回復については、問題なく賃借人に費用負担させることができる。

例えば、壁に画びょうで貼っていたポスターをはがすと、日焼け跡や画びょうの穴が残る。これは通常使用の範囲内。冷蔵庫の後ろの壁が黒ずむ「電気焼け」も同じ。いずれも修繕費用は家主負担だ。

一方、手入れをせずに放置した台所の油汚れ、子供の落書きなどは入居者負担になる。

 

契約に「敷引特約」があるかどうか

通常損耗の原状回復について判例では、賃借人に費用負担させるにはその旨の特約が明確に合意されていることが必要、ということになっている。また、特約があっても、その内容が合理的な内容でなければならない。国交省のガイドラインでは、賃借人に特別の負担を課す特約の要件を定めている。

  1. 特約の必要性があり、かつ、暴利的でないなどの客観的、合理的理由が存在すること
  2. 賃借人が特約によって通常の原状回復義務を超えた修繕等の義務を負うことについて認識していること
  3. 賃借人が特約による義務負担の意思表示をしていること

さらに、消費者契約に詳しい弁護士が次のように付け加えて解説する。

「契約終了時に敷金のうち、一定金額を差し引く旨の敷引特約が賃貸契約書に明記されていることがあります。この敷引特約について、最高裁判所では『敷引金の額が高額に過ぎると評価すべきものである場合には(中略)消費者契約法10条により無効となると解するのが相当である』との判断を示しています。その上で、家賃の2倍弱ないし3~5倍強程度の金額を敷金から差し引く特約については、契約更新の際に更新料のほかに、礼金等他の一時金を支払う義務を負わせていないなどの諸事情を踏まえ、有効と判断されています」

ある不動産コンサルタントはトラブルを避けるために次のようにアドバイスする。

「入居時からある傷や汚れなどは写真撮影して不動産業者に指摘しておきましょう。入居時に貼り替えなかったクロスなどはすでに減価償却が進んでいるはずなので、その分、入居者負担は少ないはず。いつ貼り替えたものなのか、退去時に不動産業者に説明を求めればいいでしょう」

 

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