さまざまな謎をはらんだ展開で、大きな波紋を呼んでいる『週刊少年ジャンプ』の新連載『一ノ瀬家の大罪』。最新話の内容から、その“元ネタ”を考察するファンが相次いでおり、「七人ミサキ」や『火の鳥』といった物語との類似性が指摘されている。
※『一ノ瀬家の大罪』最新話の内容に触れています
同作はワケありな事情を抱える「一ノ瀬家」が、一家全員記憶喪失になったことから始まる物語。長男の翼を主人公として、記憶喪失になる前はどんな家族だったのか…という謎に迫っていくサスペンス漫画だ。
ほのぼのとした絵柄ながら、イジメや援助交際など、シリアスでハードな問題に切り込んでいく作風は、作者・タイザン5の前作『タコピーの原罪』さながら。
物語の全貌は今なお謎に包まれているが、「一ノ瀬家の大罪」というタイトルから、キリスト教における「七つの大罪」がモチーフだという説も囁かれていた。家族の人数は6人なので1人足りていないが、傲慢・怠惰・嫉妬…などの罪が、それぞれに当てはまっていくのではないかと考察されていたのだ。
しかし最新話では、父・翔が運転する車で旅行に出かけた一ノ瀬家が、交通事故に見舞われてしまう展開に。目を覚ましたとき、翼の前にいたのは、父・翔を名乗る全くの別人だった──。
集団のなかの1人が消えて、別の1人が新たに加わる…。この構図は、四国・中国地方に伝わる民話「七人ミサキ」にそっくりだと言えるだろう。
「七人ミサキ」は7人組で現世を彷徨っている亡霊で、他の人間を呪い殺し、新たなメンバーとすることで1人が成仏する…という内容だ。
やはり人数は1人足りていないものの、「七つの大罪」ではなく「七人ミサキ」が元ネタだという説が浮上している。
手塚リスペクトを感じさせる「八百比丘尼」
ただし、「七人ミサキ」は高知県を中心として語られている伝承。「一ノ瀬家の大罪」の場合、第1話でも最新話でも、交通事故が起きたのは福井県だった。
かなり意図的に福井県であることを明示しているので、ここにも深い意味がありそうだ。
たとえば福井県は、人魚の肉を食べたことで永遠の命を手にした「八百比丘尼」の伝説でよく知られている。
「八百比丘尼」といえば、手塚治虫の名作漫画『火の鳥』の『異形編』で主題となっていたことも有名。このエピソードでは、尼を殺した報いとして永遠の命を生きることになった人間が描かれており、「ループもの」の元祖とも呼べる物語だった。
「一ノ瀬家の大罪」もまた、最新話にて「ループもの」のような展開に突入している。あくまで予想だが、一ノ瀬家の面々は何らかの罪の報いとして、ループに閉じ込められている…という設定が隠されているのかもしれない。
はたしても元ネタは「七人ミサキ」なのか「八百比丘尼」なのか…。今後の展開からも目を離せない。
文=Tら
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Kostiantyn Postumitenko / PIXTA