映画評論家・秋本鉄次のシネマ道『X-ミッション』

元ネタは1991年のキアヌ・リーヴス主演の『ハートブルー』。あちらは、ロサンゼルスのビーチが主舞台だったが、こちらはワールドワイドに世界4大陸を股にかけてスケールアップ。

持ち前の運動能力を武器に、サーフィン、スカイダイビング、ロッククライミングなど何でもござれ、究極のアスリート強盗団に潜入した捜査官と強盗団リーダーとのスリリングなかけひき…。

監督がメガヒット・シリーズ『ワイルド・スピード』の撮影監督エリクソン・コアのせいか、テンポの早い、見せ場の連続でまくしたてる。その分、“男前”な女性監督キャサリン・ビグローらしい『ハートブルー』にはあった男同士の危険な匂いは希薄で、ひたすらスポーティーに徹している。

強盗を働いても殺傷沙汰はご法度の“無血主義”、奪った金は下層の人たちに上空から撒き散らす義賊みたいな“無欲主義”、そして壮大な海や山への敬意を忘れない“自然崇拝主義”という犯罪集団らしからぬポリシーを持つ強盗団を率いるエドガー・ラミレスが精悍な髭面でカッコ良くて、捜査官役のルーク・ブレイシーを凌ぐほど。

ちなみに、『ハートブルー』でこの役を演じていたパトリック・スエイズは09年にすい臓ガンにより57歳の若さで死去している。