アニメ『ポケモン』“真の最終回”とは…? 生みの親が思い描いたサトシの運命

アニメ『ポケモン』“真の最終回”とは…? 生みの親が思い描いたサトシの運命

アニメ『ポケモン』“真の最終回”とは…? 生みの親が思い描いたサトシの運命 (C)PIXTA

3月24日、アニメ『ポケットモンスター めざせポケモンマスター』が最終回を迎え、26年にも及ぶサトシの旅路が幕を下ろした。そのエンディングに多くのファンたちが感動しているが、実は当初のアニメ「ポケモン」でまったく別の結末が予定されていたことをご存じだろうか。

いまや幻となった“真の最終回”とは

アニメ「ポケモン」の土台を築き上げた人物といえば、真っ先に故・首藤剛志氏の名前が挙がるだろう。

彼は1997年にスタートしたテレビシリーズの構成を最初に担当した脚本家であり、いまなお傑作と謳われる『劇場版ポケットモンスター ミュウツーの逆襲』の生みの親でもある。

同映画では“ポケモンと人間の共存”が主題に据えられていたが、もともと「共存」は首藤氏がアニメのシリーズ構成を依頼された時に考えていたテーマだったという。

このことについては『WEBアニメスタイル』のコラム『シナリオえーだば創作術――だれでもできる脚本家』で綴られており、第184回「『ミュウツーの逆襲』のその先へ」では初期案のエンディングについても言及されている。

そしてその内容は、現実のアニメ最終回とはまったく異なるものだった。

人間にゲットされたポケモンは戦いの道具、いわば人間の奴隷と化し、いつしかポケモンは人間と対立するように。

友情を築き上げたサトシとピカチュウのあいだにも、深い溝ができてしまう。

はたしてピカチュウはポケモンとしての自分を選ぶのか。それとも違う生きものである人間と、いままで通り共存していくのか…。

苦悩するサトシとピカチュウにその答えを突きつけたのがロケット団であり、人間によって生み出されたポケモン・ミュウツーだった。

初期案では現実に帰るサトシの姿が…

それから月日が経ち、老人になったサトシはふと少年時代を思い出す。想像上の生きものであるポケモンたちとの友情や冒険の数々を…。

やがて母親に叩き起こされたサトシは少年の姿に戻っていて、元気に家を飛び出していく。それはポケモンをゲットする旅でもポケモンマスターになる旅でもなく、自分とは何かを探し、他者との共存を目指す旅だ──。

以上が首藤氏の構想していた初期案のあらましだが、そこでサトシの人生は“ポケモンという虚構と別れて現実に帰る”ことで完結する予定だった。

しかし実際に放送されたアニメの最終回は、真逆と言うべき結末へ。世界中のポケモンたちと友達になるために終わりなき旅を続ける、つまりは見果てぬ夢を追い続けるエンディングだったのだ。

言い換えると虚構の世界にとどまること、あるいは虚構と現実という区別自体をなくす結末ということになるだろう。

ただ、首藤氏が大切にしていた「共存」というテーマについては、決して見失われたわけではない。

人間とポケモンが共存する道は、スマートフォンアプリ『ポケモンGO』や実写映画『名探偵ピカチュウ』によって、年々切り拓かれている最中だ。

サトシが卒業したアニメ「ポケモン」にも、また新たな夢を見せてくれることを期待せざるを得ない。

文=「まいじつエンタ」編集部

【画像】

master1305 / PIXTA