WBC優勝も…日本野球は衰退する!? 低打率の野球漫画と大ヒット中のサッカー漫画

WBC優勝も…日本野球は衰退する!? 低打率の野球漫画と大ヒット中のサッカー漫画

WBC優勝も…日本野球は衰退する!? 低打率の野球漫画と大ヒット中のサッカー漫画 (C)PIXTA

日本国民が一丸となって応援した侍ジャパンの優勝により、過去にないほどの盛り上がりを見せた第5回「ワールド・ベースボール・クラシック」(WBC)。しかしその熱気は永遠のものではなく、近い将来に野球が日本を代表するスポーツではなくなるかもしれない。

日本に野球を根付かせた名作漫画の数々

本邦における野球の衰退を予感させるのは、漫画業界での存在感低下だ。ここ数十年、野球漫画がヒットする“打率”は低下の一途を辿っている。

歴史を振り返ると、日本で野球が国民的スポーツとして定着したのは、1950年代から1960年代にかけてのことだった。

テレビ局が野球の実況中継を行ったのは、1953年のこと。そしてそれから数年後、長嶋茂雄と王貞治が読売ジャイアンツに入団し、黄金時代を築き上げていく。

巨人軍の人気が高まるなか、1960年代前半には『ちかいの魔球』や『黒い秘密兵器』、『ミラクルA』など、巨人軍を主役とするさまざまな漫画が発表されることに。この系譜の代表作と言えるのが、1966年から連載が始まった梶原一騎原作『巨人の星』だろう。

「巨人の星」が掲載された『週刊少年マガジン』が、ここから100万部を突破するほどの人気雑誌に成長していったのは有名な話だ。

また1970年代前半には、水島新司の『ドカベン』『野球狂の詩』『あぶさん』、ちばあきおの『キャプテン』など、野球漫画の傑作が次々と誕生している。

こうして見ると、世間の野球ブームを背景として野球漫画が盛り上がったことがよく分かるが、逆に漫画が野球少年たちに与えた影響も忘れてはならない。

プロ野球選手が野球漫画の影響を口にすることも多く、とりわけ名前が挙がりがちなのが「ドカベン」。イチローに松坂大輔、清原和博に落合博満、原辰徳など、錚々たる面々が同作について熱く語ってきた。

また、WBC優勝の立役者となった名将・栗山英樹監督も、「ドカベン」の影響を度々口にしている。

プロ入り直後の大谷翔平選手を育成したのも栗山監督だが、“1番・投手”という斬新な起用法は同作が元ネタの1つだったという。

いつの間にか存在感が消えつつある野球漫画

ある時代の日本において、野球漫画の存在感が大きかったことは間違いない。その勢いは1980年代に入っても変わらず、恋愛要素を織り交ぜたあだち充の『タッチ』が一世を風靡したことは印象的だ。

「巨人の星」に「ドカベン」、「タッチ」…。およそ10年に一度のペースで、時代を代表するような野球漫画の傑作が生まれていたが、その流れは1990年代には継承されなかった。

『H2』、『MAJOR』、『ROOKIES』といった小ヒットこそ見られたものの、国民的な大ヒット作には恵まれなかったのだ。

それから30年近く立った現在でも状況は変わっておらず、ここ数年はとくに壊滅的。昨年10月には『週刊少年マガジン』で連載されていた『ダイヤのA actII』が完結を迎え、「MAJOR」の続編である『MAJOR 2nd』も迷走が指摘されている。

こうした惨状は、世間の野球人気が右肩下がりになったことも影響しているのだろうが、たんに市場の変化では済ませられない話だ。

今の子どもたちに訴えかける野球漫画が不在であることは、将来の野球人気にも大きな影を落とすだろう。

それに対して現在のスポーツ漫画界隈で目に付くのが、サッカーを題材とした作品の台頭である。

昨年には『ブルーロック』や『アオアシ』といった作品がアニメ化され、大きな話題を集めた。

とくに「ブルーロック」はワールドカップ(W杯)の盛り上がりと同調し、累計発行部数2,400万部を突破するほどの勢いを見せている。このままいけば、国民的漫画となる日も遠くないかもしれない。

「ブルーロック」がここまでブレイクした理由としては、男性のみならず女性からも熱く支持されていることが挙げられる。

そもそもサッカー漫画は1980年代からブームを巻き起こした『キャプテン翼』も含めて、女性からも人気を集めやすい傾向にあった。

逆にここ数十年にわたる野球漫画の斜陽は、女性読者を獲得できなかったことが大きな原因とも考えられる。アニメ化もされた『おおきく振りかぶって』のような一部の例外を除いて、男女ともに夢中になれる作品が生まれていないことは事実だろう。

現在漫画を読んでいる子どもたちが大人になり、世代交代が行われる頃には、野球に代わってサッカーが“国技”の座を奪っているかもしれない…。

文=「まいじつエンタ」編集部

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